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「こんな所で油売ってないで、ヘルプ回りでもしてきたら?………万年ヘルプくん」
切れ長の蒼眼が、不敵な笑みを溢す。
僕の言葉尻を真似て、童顔ホストをからかった。
……こいつら、ヘルプ組だったのか。
それなのに、よくナンバーワンホストにまで上り詰めたアゲハを侮辱できたな。
……事情なんか、何にも知らない癖に。
軽蔑した視線に、同情と怒りが混ざり合う。
「……は、はい。すみません」
僕からサッと離れ簡単に身形を整えた万年ヘルプくんは、何処か含んだような表情のままバックヤードから出て行く。
その後を、新人眼鏡があたふたと追い掛けていった。
「正直、見直した」
薄い唇の端が少しだけ上がる。
「この世界には似合わない匂いがしてたから、さっきの雑魚にやられちゃうかと思ってたよ」
ドアから離れ、金髪蒼眼ホストが僕の方へと近寄ってくる。
目を逸らさずそいつを下から睨み上げるけれど、僕では威圧感とかそういったものは一切感じないらしい。
「あんた、アゲハの弟なんだってね。どおりで何となく似てた訳だ」
独り言の様に呟き、頷きながら僕の傍らに立つ。そしてジャケットの裾をパンと手の甲で払った後、スッとしゃがみ込んだ。
「……で。アゲハの弟が、なんで大友組の狂犬と一緒にいんの?」
……大友組……
こんな具体的な名前を聞くのは、初めてだった。
ハイジは、龍成って人の恩義を返しているだけ。暴力団組員じゃないって言ってた……
でも……
……狂犬……って……
まさか、暴力団に飼われてるって訳じゃ……
「アゲハがこの世界に飛び込んだのは、弟をヤクザから守る為だって聞いてたんだけど。……あれ、嘘だったの?」
切れ長の目が細められる。
口角を綺麗に上げた、営業スマイル。
そこには、何の感情も感じない──吸い込まれた所で、ブラックホールの様な闇が広がるだけ。
「………」
「まぁ、別にいいけど。
……でも、これ付けてるって事は、ハイジに捕まって飼育されてるって事だよね」
押し黙る僕の首元に、ホストの手が伸びる。
黒革の首輪。それを下から指で引っ掛け、二度ほどジャラジャラと揺らす。
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