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……さくら。
大丈夫だよ……さくら……
お兄ちゃんが、守ってあげるから。
僕の髪を撫でる、手。
優しくて……温かくて……
安心する。
……ヒュッ、……
突然、空気が流れ込む。
しかし直ぐに喉が貼り付き、喉から奇妙な音が漏れる。
本能的に酸素を求め、口をぱくぱくと開閉するけれど、入るのは口先ばかり。
先程少しだけ喉を通った空気は、肺に到達する前に噎せ返ってしまった。
肺に空気が残っていなかったせいか、吐き出そうにもそのものがない。
鳩尾が何度も凹み、内臓がうねり、普段なら恥ずかしくなるような変な嗚咽の音を、何度も繰り返す。
「……さくら」
涙で濡れた睫毛を、少しだけ持ち上げる。
「……さくら……」
視界に映るのは、ハイジの不安げに揺れる瞳。
焦点が何となく合うと……何処かホッとしたように、ハイジの口元が緩む。
……ハイジ……
まだハッキリとしない、意識。
感じるのは……脈打つように痛む頭と、寒気と、痺れ。
絞められた首。喉の違和感。
息苦しさ。
「………」
「悪ぃ。……悪ぃかった……」
大麻用のLEDから漏れた光が、ハイジの髪と顔の一部を照らす。
透き通るような、白金の髪。
こんな時まで、綺麗だな……なんて感じてしまう僕は、おかしいのかもしれない。
ハイジの膝の上に抱き抱えられたまま、その髪にゆっくりと手を伸ばす。
その手首を、戸惑いながら掴んだハイジは、自身の頬へと誘導した。
「オレ、……さくらを失うかと……本気で……」
酷く怯えた手。
指先を小さく動かし、頬に濡れた涙を掬う。
「……もう、傷つけたくねぇのに……」
「………」
その手を取って、ハイジが指先にキスを落とす。
そこから、溢れる程のハイジの優しさや愛情が、僕の体に流れ込んでくる。
ズキ、ン……
ハイジが解らない、なんて……
……なんでそんな事を思ってしまったんだろう……
こんなに真っ直ぐ、僕の事を思ってくれているのに……
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