アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
91
-
予想外の台詞に、驚いてハイジを見上げる。
「さくらと一緒に、知らねぇ土地でひっそりと暮らすのもいいな……って」
「………」
「何だよ」
悪ぶった口調。
でも、何処か照れたような……嬉しそうな声。
「前に話したろ?……オレは暴力団組員じゃねーって。
……だから、抜けるも抜けねぇもねーんだけど……結構この世界に足突っ込んじまってるし……
……龍成さんには、マジで頭上がンなくてさ」
ハイジの瞳が揺れる。
憂いが灯り、弱々しいその光に胸が締め付けられる。
小さな溜め息をつき、遠い過去を辿るように僕から視線を外した。
「……覚えてっか?
去年の夏、チームで海岸沿いを走らせた時の事」
……ドクンッ
瞬間、心臓が大きく胸を打つ。
ハイジが豹変して、狂気的になってしまった時の事だ。
「あン時、さくらにちょっかい出した野郎をオレがボコったろ?」
「……うん」
「ソイツ、あの後………死んでさ……」
ハイジの温かな腕の中にいながら、ゾクッと寒気がした。
無意識に、首元に手を当てる。
『死』という言葉に、体は正直に反応を示すものの………脳内では、何処か現実離れしたような感覚が襲う。
一年程前の出来事だからだろうか。
それとも、僕にとってどうでもいい赤の他人だからだろうか。
それでも、ハイジが犯してしまった事を思えば、じわじわと罪悪感が湧き上がり胸中が痛む。
あの夜、ハイジが酷く怯えていたのは……そういう事……だったんだ……
「その後始末をしてくれたのが、龍成さんなンだよ」
「………」
そういえばあの時……ハイジは、何処かに電話を掛けていた。
その相手が……龍成だった……って事……?
「……違ぇよ。オレらのチームのバックに付いてる暴力団組員(やつ)の知り合いが、偶々龍成さんだったってだけだ」
声が、漏れてしまったのだろうか……
「その見返りに、オレは薬を売りさばかなきゃなんなくなってよ……」
″ 今度、オレやべぇ事すんだよ。
もう会えなくなるかもしれねぇ ″
「………」
そんな……
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
91 / 554