アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
75.
-
「俺は痛くてもいいからしたい」
「だめ」
そこだけは、痛い思いをさせることだけはしたくない。そこはいくら海くんに何と言われても譲る気がない。
「どうしてもエッチするってなるなら、僕が入れられる側がいい」
「そしたらお前が痛いじゃん」
「海くんにされるなら痛くてもいいよ」
「なんでそれを俺が思ってても受け入れてくんねーの?」
海くんの言い分はもっともだ。
だけど、どうしたってそう思ってしまう。
海くんを傷つけることは、したくない。
その気持ちが、海くんを傷つけてることには気付けなかった。
翌日、久しぶりに海くんから冷たく素っ気なくされた僕は、地面に埋まりそうな勢いで落ち込んだ。
それこそクラスメートが空気が重い!と叫び出すほどに僕は落ち込んだ。
「唯斗、なにして岡崎怒らせたの?」
「…………なにもしなくて、怒らせた」
「?」
「ねえ直樹。好きな人に痛い思いをさせてまでエッチする気持ちが僕には良くわかんないよ……」
直樹はポカン、としたかと思ったら笑い出した。
いつもクスクス、という感じの笑い方をするのに、これじゃゲラゲラだ。
「よし、おバカな唯斗くんと考えるか」
「?」
直樹は、女の子だって初めはきっと痛いってこと。
もちろん、男同士だって痛いってこと。
それでもセックスをしたいのは、もっと近くに感じたいって思うからじゃない?と言った。
直樹の言うことが全くわからないわけではない。だけど、それでも。
「体を繋げなくても、心は繋がれるよ」
「まあな。でも体の方が簡単なんだよ、それこそウリやらセフレやら。そんな風に簡単に手に入る関係だってあるけど、心はそうはいかない。お互いが欲しがらなきゃ手に入らない。そうやって心が手に入ったら、きっともっと欲しくなる。もっと近づきたくなる。どっちかだけで満足できる?」
「唯斗の相手を思う気持ちって俺は好きだよ。でも、傷付けたくないって気持ち、押し付けてない?岡崎とゆっくり、話してみ?」
そのあと、まだ何か話していた気がしたけどよく聞こえなかった。
傷付けたくない気持ちを、僕は海くんに押し付けていると思う。
海くんは痛くてもいいと言っていた。それを傷付けたくないと言ったのは僕だ。痛くてもいいと言った海くんは、どんな気持ちだったんだろう。
大切にする、が噛み合っていない。
痛い痛くない、
傷つける傷つけないじゃなくて、
それよりもっと素直な、そんな感情の話をしただろうか。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 143