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04
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週末。
仕事が終わると同時にすぐに家へ帰り、着替えて飲み屋街に向かった。
正直身体は休憩をとりたいと悲鳴を上げていたがそれ以上に
泣きたい。
甘えたい。
酔いたい。
そんな気持ちの方が強い。
宛もなく雰囲気の良さそうな居酒屋を探しながらふらふらと歩く
「───律、こっち」
名前を呼ばれ振り返る
そこにはいつものあいつがいた。
もうお前でいいや。
というかお前もよくこんな面倒くさいやつに毎度毎度話しかけられんな。
月曜なんて起こされた挙句コンビニに行かされてるんだぞお前。
「今週忙しかったの?」
目の前にビールが出されて一気に飲む
「忙しかった。
…もう行きたくない」
一言口に出してしまえば止まらない。
こいつは俺の仕事先も、事情も、何も知らないからダラダラと愚痴をこぼせてしまう
文の脈絡も、説明も、何もせずに俺が思ったことだけをひたすらに話し続ける
「……頭いてー」
「あー?家で寝てろよ」
「それが嫌だからここに来てんだろ」
「何が嫌なんだよ」
「何それ。そうやって聞こうとするんだ
俺はそういう魂胆知ってるから無駄だよ」
「は?」
「もうやだ聞きたくない。泣く」
「は?情緒不安定かよ」
何を言うでもなく勝手にポロポロ泣き出した俺にそいつはそっと背中を撫でてきた
「……お前、いいやつ。名前教えろ」
「え?知らなかったの?」
「知るわけねーだろ」
「まじかよ。今日一で驚きだわ」
「いいから早く」
「ひろ。」
「…ひーろー?」
「紘。」
「…ひろ」
「そ。紅野紘(こうのひろ)覚えた?」
「俺、椎名律(しいなりつ)」
「知ってるよ。初めて会ったとき聞いたわ」
「…生意気」
「何がだよ」
そうなんだ。
こいつ紘っていうんだ。
今、呆れたような、楽しそうな、そんな表情で笑っているこいつは紘。
覚えておこう。
いつの間にか涙は止まっていて、背中を撫でていてくれた手も無くなっていた
さっき散々愚痴ったし泣いたし、気持ちはすっきりしていて、何か楽しい話がしたくなった
「…なー、見て?ピアスこれ新しいの」
安全ピンの形をした金色のピアス。斬新でお気に入りだ。
この前ネットで一目惚れして買ったもの。
「へー、こんなのもあるんだ」
するり。と耳に触れられ、擽ったくて笑ってしまう
「いいだろ。ずるい?」
「いや別に」
「えー、嘘だ」
そいつの隣に座っていたが、何だか肌寒くてそいつの膝の上に座る
「お前どうしたの。今日可愛い」
「気分。」
「ふは、お前らしすぎ」
そいつは嫌がることなく後ろから手を回してくれた
「なー、キスして?」
「は?」
「いいじゃん」
「いやダメだろ」
「何で?」
「酔ってんの?」
「酔ってるけど」
うーん、とりあえず場所変えるか。と膝の上から降ろされ、会計が済まされる
次に入ったのは個室のある焼き鳥屋だった
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