アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
06 side紘
-
side紘
何なんだこの酔っぱらいは。
「もっとくっついて良い?」
そんなこと言うから何かと思えば、座っていてもフラフラ揺れる頭で、抱きついたり首元に顔を埋めたり、かと思えば突然枝豆を食べ始めたり。
行動が謎すぎてよくわからないが、取り敢えず放っとくと倒れて机に頭をぶつけそうなので、お腹のあたりを軽く押さえておいてやる
律との出会いは2ヶ月くらい前だったと思う。
ひとりで飲んでいたとき、たまたま隣に座ったのが律だった。
全身黒のコーディネートで耳元だけに金色のピアスがついていた。
チェーンみたいなピアスで印象的だったから覚えている。
スカジャンも、革のブーツも、大量のピアスも。
どれも様になっていて、全体を通して綺麗だと思った。
最初はオラついたその雰囲気に関わらない方が良いかと思ったが、体の線も細いし、いざとなれば勝てるかな。なんてそう思った
それに、何だか危ない目をしていた。
薬物とかじゃななくて、とても疲れている目。
気づいたら話しかけていた
最初は興味本位だったのかもしれない。
その美しさには不釣り合いな程、疲れた目をしていたから。
「こんばんは」
「あ?」
結果から言えば、楽しかった。
性格が、コロコロ変わるのだ。
こんな人には初めて会った。
まるで別人みたいに変わる。
性格が変わるのと同時に思考回路まで変わるから言っていることがあっちに行ったりこっちに行ったり。
でも、話を聞いていて全く嫌な気持ちにはならなかった。
むしろ、聞いてあげたいというか…不思議な気分だった。
「…紘。寝ていい?」
律の問いかけに思考が一度途切れる。
「寝んの?」
「……うん」
「だめ。」
「…ぇ」
「だめ、家帰れ」
「もう帰れない、…俺は眠いの」
「明日休みだろ。頑張って帰れ」
「何でそうやって意地悪するの?」
誰も優しくしてくれない。攻撃ばっかりするんだ。そう言ってボロボロ泣き始めた
あー、もう、何なんだよ。
肩に顔を埋めて泣く律の頭を乱暴に撫でる
律はきっと気づいてないけど、こいつはあの日、絶妙なタイミングで俺に出会ってしまった。
だから俺はお前に、感謝をしている。
こんな夜遊ぶだけの関係に感謝なんて似合わないけれど、俺があの日死のうとしていて、それを止めたのが律だった
とは言っても、「死にたい」と言ったわけでも、律が「生きろ」といった訳でもない。
ただ、生きていくのに、少しくらい息抜きをしても、少しくらい自由にいてもいいんだと気付かされた。
それがあのときの俺にとって光みたいに眩しい考え方で、俺もそういう風に生きてみたいと思った
だから、律は俺に新しい生き方をその短時間で教えてくれた命の恩人。
まぁそれを知って欲しいわけでも、お礼が言いたい訳でもない。
俺が楽しくなってしまっただけ。
見ていて飽きない、性格のコロコロ変わるお前のそばにいるのが。
でもそれだけじゃない。
俺の命の恩人さんである律は生憎悩みが多いらしい。
だからせめて愚痴の1つくらいは聞いておいてやりたいと思ってしまったのだ
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 349