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「…バス酔う」
「は?先に言えよ」
新幹線を降りて、バスに乗り継ぐ。
座席に座って外を眺めていれば隣から弱々しい声が聞こえてきた
「結構やばい?」
「…大丈夫だけど…けど、気持ち悪い」
先に言ってくれれば酔い止めでも買ったのに。
せめてもと後ろに座っていた座席から前へ移動する。
バスは前より後ろの方が酔いやすいと聞いたことがあるから。
席は1つしか空いていなくて、律を座らせると俺は吊革に捕まった
「大丈夫?」
「…ん、」
気持ちは自由で元気なのに、それに体が付いてきてこれていない。
もっと大切にしてやらないといけない体。
よく頭が痛いと言っているのも聞くし、弱いのかもしれない。
そう思うと不思議な気持ちになる。
もっとちゃんと見ててあげたいというか、優しくしてやりたくなるような、…守ってやりたくなるような不思議な気分。
別に仕事柄とかじゃ無くて、相手が律だからそう思ったのかもしれない。
「……おりる」
「え?」
「おりる」
そう言って座席横の降車ボタンを押した律。
程なくしてバスが停まる
目的地までは後一つだったし、観光も兼ねてここからは歩いていくのも良いかもしれない
「ほら、大丈夫か」
降りてすぐのバス停のベンチに座らせる
幸い、人はいなかった。
近くにあった自販機で飲み物を買って蓋を開けてから渡してやる
「…いつもはこんな酔わねーんだけど、なんか…無理だった」
気にすんな。そう言って隣に座る
何度か深呼吸をする音が聞こえる。
しばらくして服の裾を引っ張られたので見れば、幾分か顔色が良くなっていた
「行けそう?」
「大丈夫」
一つ前の駅とはいえさすが観光地で、既に海鮮丼の旗や牡蠣が外で焼かれたりしていた
その中にテレビでやっていた生しらすの旗も見つける
「……生しらすあった」
律も見つけたらしく小さな呟きが聞こえる
「入る?」
「入る」
テレビで朝見て、昼にはそこにいて、それを食べる。
そんな事は今までした事がなかった。
少なくとも、最近過ごした休日の中で一番楽しい。
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