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涙を拭って、紘の膝からぴょんっと降りる
「あーまじ情けねぇな」
涙声は上擦っていて、いかにも泣きましたって感じが全面に出ている
一通り泣いたからか頭が冷静になってきていて、自嘲するように笑えば紘は何故か眉をひそめた
「なんか別の話しねー?」
「…しない」
「しろよ」
「そうやって嫌な事から逃げんな。聞いてやるからちゃんと向き合えよ
だからお前は情緒不安定なんだよ」
「…はぁ?」
「話飛び飛びで、突然昔のこと思い出して泣いたり怒ったり、かと思ったら仕事の話で深刻そうな顔したりさ。
そうやって辛いと逃げんだろ。だから突然思い出したりするんだよ
そんで結局自分の首絞めてる」
「別に逃げてきた訳じゃない」
「少なくとも今、お前は逃げた」
「逃げてない」
「じゃあ話せるな。」
「………嫌。」
逃げてる訳じゃないけど、話したくない。
あんまり思い出したくない。
「お前気づいてる?すげー顔色悪いよ。」
手の甲で頬に触れられ、気まずくなって手を払った
「見んなよ」
「怜もすげー心配してた。何も言ってくれないからある日突然居なくなっちゃいそうで怖いって」
「怜が?いつそんなこと」
怜って、そういうこと言う人だったっけ。
もっと能天気なやつだと思ってた
「お前がぼーっとしてたとき言ってた
そうやつもいるんだよ。
お前を大切に思ってるやつ。
俺は…まぁそこまでじゃねーけど、他人って程遠い仲でもない。
だからお前が俺に何か言えるんだったら、相談乗ってやるから。
だからひとりでこんな弱ってんじゃねーよ」
俺を大切に思ってるやつ…?
そんな人居るだろうか。
両親には置いて行かれ、誰からも求められず、なんの取り柄も無いような俺を大切って。
居ないならいないで、別に困りもしないだろう。
俺はただ何となくここまで生きてきただけだ。
俺が俺を必要と思えないのに、そんな俺を大切に思うやつなんて本当にいるのだろうか。
考え出すと増々自分が嫌いになる
考えを止めるように紘の言葉に耳を傾ければ弱ってるとか言われた
「…弱ってねーし。」
「よく言うわ
んで?話せんの?」
紘は大概お人好しだ。
「今は嫌。」
「いつなら話せんの」
「…しばらく無理」
「じゃあ気長に待つから」
「お前何で俺に構うの?
そんなに優しくする義理はないでしょ」
「…言わねぇ」
「は?何だよそれ」
「何でもいいだろ。」
「良くねぇ」
ソファでテレビを見ながら紘とそんな話をしていた。
理由がどうであれ、今紘が隣りに居てくれてよかった。
一人でいたときの様にぐるぐると考え込まなくて済む。
帰ろうとする紘を引き止め、またくっつく。
諦めたように苦笑する紘を見て俺も笑った。
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