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心配 side紘
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side紘
目を離すのは危ない気がした。
昨日のあれはもう茶化せるような領域じゃなかった
苦しそうに暴れる律を押さえ込むのは俺だってしんどいものがある
目の前でもぐもぐ鮭を食べる姿を見ながら、昨日のことを思い出した
目元はまだ赤くて、少し腫れてる。
「美味い?」
「うん、美味い」
「よかった」
少しぼんやりとした律は疲れているようにも見える
それもそうか。
こいつだって寝れてない。
仕事を辞めたことで少し、ほんの少しだけ元気が戻ったような気がしていたけれど昨日の様子を見るとそうは言えない
安心させてやりたいのに、そうさせてやれない。
こいつにとって働いていないということは俺が思うよりも大きなプレッシャーなのだろう
でも言っては悪いけど、今の律に仕事はできない。
他人を怖がりすぎる。
それに頭痛だって頻繁に起こしてる。
正社員じゃなくてアルバイトとか数件目星つけてみるか?
シフトはできる限り少なめに組んでもらって、時間も無理のない程度に。
それだけでも気持ちの持ち方は変わると思う
でも、どんな仕事?
将来的にどうなるかは別にして、今の律は他人と関われない。
となると仕事の幅は一気に減る。
多少のコミュニケーションは耐えてもらうしかないけど。
飲食店のキッチン
品出し
裏方
………難しいな。
「鮭潰れた」
「は?」
「可哀想だろ」
手元を見れば鮭の切り身に箸を押し付けていた
「何か考え事?」
「あー、まぁそうなる」
「どうしたの」
「珍しくね?お前がそういう事聞いてくんの」
「気分。何となく聞いてみただけ」
恥ずかしくなったのか、ふい。と顔を背けられてしまった
俺的にはここで元気をためて欲しい。
まだ律はぼろぼろで、つついたら壊れてしまうくらい脆い。
そっと、大切に回復させてやりたいのに、当の本人は何か焦りまくってるし。
なんでそんな自分に厳しいかな。
「ごちそうさま。律、ちょっと」
食べ終わったパッケージに蓋を閉め、律を呼ぶ
「あ?」
キッチンでタオルを濡らして律の目元に当てた
「冷やせって言ったろ」
「あー…気持ちいかも」
聞いてねーし。
思わず苦笑しながら目元を冷しす
昨日は泣きすぎていたせいか目元だけではなくて背中や首筋まで熱くなってしまっていた
そして俺は不意に思う。
小さくて泣き虫で、わがままで、でもたくさん考えて頑張ってるこいつのこと、護ってやりたいなって。
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