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「さっきの言葉ってどういう…」
「さっき?」
由李くんは本当に分からないのか首を傾げている。
あ、これ俺の聞き間違いだ。
恥ずかしい。顔が赤くなるのがわかる。
「ちよ!?急に顔赤くなったけど大丈夫!?」
「だ、大丈夫です…」
今すぐこの場から立ち去りたい。
「というかさっきの言葉って?」
「いや、俺の空耳だったんで気にしないでください…」
「えー?気になるじゃん!」
めちゃくちゃ聞かれる…。
これ以上顔が赤くなることはないだろう。
さっさと言って早く帰る。うん。そうする。
「あの…素直なとこが…か、可愛い、とか。好き、とか…聞こえたけど幻聴だったんで…」
段々と声小さくなっていき、最後には殆ど聞こえなかっただろう。
これ絶対黒歴史に刻まれるだろうな。
一生憶えてそうだ。
ずっと目を逸らしていたが、由李くんからずっと返事がないので流石に目線を向けた。
目の前の由李くんはさっきの笑顔は消え、顔は赤くなり目は泳いでいた。
「え?」
まさかの反応に驚く。
由李くんは急にしゃがみこみ頭を抱えている。
「由李くん...?」
僕が上から声をかけた瞬間、彼はばっと勢いよく顔を上げた。
「うわっ、びっくりした」
「ちよ…、いや、櫻羽八千代さん。好きです、僕と付き合ってください」
「…は?」
由李くんは跪きながら言った。それはもうどこかの王子様みたいに。
「本当はもっとちゃんとした所で言いたかったんだけど、今がチャンスかと思って」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」
まずい。この状況はとにかくまずい。
もし俺の想像することなら本当にまずい…!
こんな門の近くで、しかも学内で有名な由李くんが跪いているんだ。
周りの人達は俺たちに好奇な眼差しを向けている。
……どうする。
どうすればいい。
逃げるしかない。
俺は跪く由李くんを置いて、走って逃げた。
運動不足故足は遅かったが、頑張った方だと思う……。
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