アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
30
-
「ん。美味しい」
グラスに注いだロマネ・コンティを一口飲むちはるさん。
絵になるコト……
「俺も頂いてよろしいですか?」
「もちろん」
ちはるさんの了解を得てから乾杯する。
その後、手に持ったグラスを回して香りを嗅いだ。
滅多に飲まねぇけど、この忘れられないほどの強い香りはやっぱワインの中でダントツ。
値段の割に味は美味くないケドね。
俺的にはカフェ・ド・パリとかのが好き。
「葵は飲まないの?」
ちはるさんの隣でグラスを手にしたままでいた葵がはっとして、慌てて口を開く。
「いえ、頂きます。ちはるさんの飲む姿に見惚れてて、すいません」
はっ、よく言う。
ただ飲めないだけだろーが。
心の中で思いながら目の前で平然とグラスを口に運ぶ葵を見る。
……クソ、様になってるのが腹立つ!
「どう?」
「美味しいです。この華やかな香りと深い味わい、ずっと感じていたいですね」
そう言ってちはるさんを抱き寄せる葵に鼻で笑いそうになってしまった。
なーにがずっと感じていたい、だよ。
てか、目の前でキスしないでくれます?
俺、透明人間じゃねーからな。
2人の見たくもない光景をつまみに俺はグラスに残っていたロマネ・コンティを一気飲みした。
ちなみにワインの飲み方じゃ完全アウト。
ま、視界に入ってないなら何してもOKだろ。
「やっぱり、ここで飲むお酒は美味しいわね。今日は特に」
葵から離れて視線だけ俺に向けてくるちはるさんに不覚にもドキッとしてしまった。
なんて言うか、妖艶?
性格は難ありすぎだけど。
超が付くほどワガママだし構ってちゃん。
でもそれをカバーするほどの金を落としてくれるから、社長もマネージャーもこの人だけは特別視してる。
「俺もです。ちはるさんと一緒ならいつでも特別ですけどね」
「ふふ、私も葵がいれば十分よ」
じゃあ、なんで俺呼んだ?
なんて突っ込める訳もなく2人のいちゃいちゃを見せつけられる。
「…………………………」
昨日、俺に愛花が本カノかなんて聞いてきたけど……
コイツこそちはるさんとできてんじゃねって思うほどの雰囲気。
他愛もない話をしながら、葵の骨張ったゴツゴツしてる指とちはるさんの細くて華奢な指が絡まる。
「っ……」
あぁっ、ほんと、
なんで俺……!
昨日の悪夢がまた頭を過って目を逸らした時、携帯の着信が鳴った。
「ちはるさんの?」
「誰かしら……」
鞄から携帯を取り出して画面を見るちはるさんの表情が一瞬強張った。
「少し失礼するわ」
トーンが下がった声でそれだけ言うと席を立つ。
そのまま部屋にあるトイレへ入って行った。
え……マジかよ!
まさかの葵と2人きり。
とりあえず、テーブルに置いたグラスをもう一度手にして口に運ぶ。
「空ですけど。グラス」
「!?」
その言葉にはっとして慌ててグラスをテーブルに戻す。
隣ではニヤニヤと笑ってる葵のムカつく面。
「ちょっと残ってたんだよ! あー、クソ喉乾いたっ」
動揺を隠す様に葵から顔を逸らす。
っ、なんでこんな心臓うるせぇんだよ!
「なら、注いでやるよ」
そう言ってご丁寧に両手でロマネ・コンティの瓶を持つと俺のグラスに注いできた。
「いいのかよ。ちはるさんいねぇのに」
「あの人、頼んだ酒1杯しか飲まねーの。バレねぇよ」
あー、言われてみれば毎回ヘルプやコールで入った奴が飲んでたな。ワインの時なんか特に。
まぁ、実際のとこは……
「お前がワイン飲めないだけだろ。カワイソーに」
ロマネ・コンティは別としてもスパークリングすら嫌いってどうなわけ?
そもそも酒自体飲めないホストもいる時点で俺には考えられない。タダで飲めるなんてもはや天国。
なんて思いながらグラスを一気した。
喉がカァーッと熱くなる。
「大っ嫌いですから。コレより、断然水の方がマシ」
「おま、ロマネ・コンティに謝れ! てか、認めていいのかよ?」
ちはるさんが頼んでいたフィリコのジュエリーウォーターを俺の空になったグラスに注いで飲む葵。
自分ので飲めと思ったけど、コイツのグラスにはまだワインが残っていた。
今までだったらどうでも良かったそんな行為が、今は『あ、間接キス』とか思ってしまう自分の思考を呪いたくなった。
「お前は別に今更だろ。……それに、一晩共にした仲だしねぇ」
なっ……
グラスを口にあてながら、流し見るように言われてまた心臓が跳ねる。
「だ、誰がお前なんかとっ」
顔を背けるけどギシリと革製のソファが軋む。
ちはるさんが座っていた所に葵が移動してきて。
「見過ぎなんだよ。そんなにちはるさんが羨ましかったわけ? るき」
「ーーっ!」
わざわざ耳元で言ってくるコイツに苛立ちしか湧かない。
「な、んで俺がお前の客に! 調子乗んなよ、クソっ」
「顔、真っ赤にして言われてもね」
ーーカチン。
「いい加減にっ……」
我慢できずに殴ろうとしたら、拳をバシッと掌で止められてしまった。
そのまま手を握られて引き寄せられる。
「俺に触られたかったくせに。バレバレなんだよ、るきチャン」
「ぁ、んぐっ……」
ご満悦な面が近付いてきて、逃げる間もなくキスされた。
ちはるさんのグロスが付いた口で。
「はっ、んん……!」
入ってきた舌を噛もうとしたら離れて。
角度を変えながら口内をコイツの舌に舐められる。
しかも、掴まれた手はさっきちはるさんと絡んでいたように恋人繋ぎで指が交差する。
「ぁっ、クソ……」
ムカつくのに体はゾクゾクと震えてしまう。
「……もっとする?」
「っ!」
指が絡んだ俺の手をとって、手の甲にキスしてくる葵に心臓の音が止まなくなる。
まただ。
なんで、コイツなんかに!
「は、誰がするかよ!!」
ドンッとコイツの手ごと胸を押して離れる。
自分の唇からほのかにいちごの香りがして、手の甲で拭った。
それでも、まだ心臓は煩いまま。
「ま。俺もゴメンだけどな。その牙とったらしてやらなくもねぇけど」
コイツ何様!?
「なら一生とらねーよ!」
そもそもとりたいとも思わねぇしな!
こんな奴に平常心でいられない自分が許せなくて苛立ってきた。
余計に!
「……てか、ちはるさん遅すぎ」
いつまで電話してんだよ。
コイツと2人が嫌でそう呟いたら葵がとんでも発言をしてきた。
「また揉めてんでしょーよ。旦那サマと」
…………は?ダンナ?
※カフェ・ド・パリ……1万から1万5千円。スパークリングワイン〈発泡するワインの事〉。甘くて飲みやすく、お値段も安価。
※フィリコ〈Fillico〉のジュエリーウォーター……卓に置いておく飾りボトル。スワロフスキーを使用した豪華なボトルの中身はミネラルウォーター〈神戸ウォーター布引の水〉。ホストクラブだと5万から20万前後。
中身がお酒の場合お値段上がります。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 33