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不完全
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村木 颯汰(むらき そうた)Dom
小野本 葵(おのもと あおい)switch
神様は時に残酷だ。
なんでDom、subというダイナミクスの他にswitchなんてものを作ったのだろうか?
友人はswitchってどっちにもなれるんだろ?めっちゃ良いじゃん。なんて簡単に言うけれど、そんなに簡単なものじゃない。
switchはどっちにも「なれる」んじゃなくてどっちにも「なれない」んだ。
完璧なDom、subにはなれない。不完全なままで終わってしまう。
今まで何人かのDom、subと付き合ってみたけど、Domにはsubっぽくないと言われ、subにはDomっぽくないと言われる。
何で僕なんかがごく稀に居るようなswitchになったのだろう?僕はどちらも不完全なままより、どちらかだけでも完璧な方が良いと思う。だって、こんなどちらにもなりきれない感情は誰だって要らないだろ?
今まで付き合ってきた人は当たり前のように僕に完璧を求めてきた。
今からもそうなんだろうと思うと誰とも付き合う気にはなれず、ここ2、3年は誰とも付き合っていない。
当たり前のように完璧を求められ、求められたものを返す事ができなかったら簡単に捨てられてしまう。そんな苦痛を味わうぐらいならもういっそのこと誰とも付き合わなければ良いのではないかとさえ思ってしまう。
そんなひん曲がってしまった僕の考えを変えたのは1人のDomだった。
彼はどこか他の人達とは違っていた。
初めて彼に会ったのは入社式だった。彼は笑顔が眩しく、人懐っこく、子犬のような後輩だった。
緊張しながらも皆の前で自己紹介をする彼はとてもDomには見えなかったし、今後僕とどうにかなるともその時は全く思わなかった。
上司に彼の教育係を任され、彼と話す機会が多かったのも密かに彼に惹かれていった原因かもしれない。
持ち前の彼の人懐っこさで、ぐんぐんと距離を縮められ、僕には持って無いような明るさや、さり気ない気遣い、優しさが見えるようになっていき、彼に惹かれていくのに時間はかからなかった。
何でこうなったのか。
あれよあれよという間に彼のペースに乗せられてしまい、気付けば彼の家に居た。
「先輩って恋人とか居ないんですか?」
そして何故か彼に迫られている。
「…居ないけど」
「パートナーも居ないんですよね? 前に長続きしないって嘆いてましたもんね」
何故彼はそんな事覚えているのだろうか?
「先輩、俺と一度試してみませんか?」
懐いた犬みたいにしっぽ振ってキラキラした目で見てくる彼の真剣な眼差しをその時初めて見た。
彼の好意には薄々気付いていた。だかは僕の気持ちは絶対に知られてはいけないと思って必死に隠してきたのに、彼は僕の気持ちなんかお構い無しにズカズカと僕のフィールドに入って来ようとする。
「僕はswitchだよ、君の理想のsubにはなれない。もう拒否されるのは辛いんだ。捨てられたくないんだよ」
「そんなの試してみないとわからないじゃないですか!!」
びっくりした。彼が声を荒らげたのを始めて聞いた。
「ダメだったら、直ぐにやめるから…」
彼ははっとしたように、言い足した。
お願い。と子犬のような目で見られたら駄目とは言えない。
「本当に直ぐにやめるんだな?」
そう言うと彼はうん!!本当に本当。と食い気味に言た。
「じゃあ先輩、ベッド行こう」
まだ良いとは言ってないのに。と思いつつも彼に流されている自分がいる。
もうこうなったらなるようになれだ、腹をくくるしかない。
彼の要望に答えられずにがっかりされるのは嫌だなぁ〜。なんて呑気に考えた僕の考えは杞憂に終わるんだけど、それはもうちょっと後のお話。
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