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突然の出会い#12
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いつもと同じ夜。強いて言えば少し星が綺麗なくらい。
どうせ家には今日も僕以外誰も居ない。
複雑な家庭環境ってわけではないけど仕事が忙しい僕の親は、ほとんど毎日会社やその近くのネットカフェに寝泊まりしている。
母子家庭なんてだいたいそんなもんだと思う。
だから寂しいとか、辛いとかそんな感情はあまり無い。
昔からこれが普通だった僕は、
1人に慣れてしまったのかもしれない。
ピロン
こんな時間に、普段鳴らない音が部屋に響く。
氏原先生は真面目だから、
夜の9時以降は僕に絶対連絡してこない。
窓のずっとずっと向こうで輝く優しい光なんてものともせず、枕元は眩しく照らされた。
『寝たか』
Rickyだ…
瞬間、閉じかけていた目は勢いよく持ち上がり、反射的に文字列に向かって手を伸ばす。
Rickyが、僕のために指を動かして入力した文字。
たった3文字。
「ね」
「た」
「か」
そっと指で文字を辿って、早まる鼓動を押し込むように左手を胸に当てた。
やり取りを見返す。
受話器のふきだしの隣には、18時55分の文字。
ふと時計に目をやれば、Rickyの声を聞いてから既に4時間が経っていた。
保健室で聞いたのとは少し違う、機械を通したRickyの声。
同じ耳元で聞くそれも、
直接と電話越しでは違って聞こえて
そのどちらともが、絶妙な気怠さと色っぽさを併せ持つんだ。
雲の上の、そのまた上の宇宙みたいな未知の存在
信じられないけど、
僕の、恋人。
「〜〜〜っっ。」
思わず悶えちゃう。
仕方ないよ、そりゃ。
と、その時
ピロンッ
僕の顔を照らすそれから、再び無機質な音が鳴る。
『おい、既読ついてるのに返事遅いぞ。』
まさかの、追加でメッセージが届いてしまった。
「ごごごめっ、なさい!」
誰もいない部屋に、焦った僕の情けない声がこぼれる。
やばい、返事。
返事、しなきゃ。
“起きてました”
何か面白い事を言えたら
何か話題を膨らませる一言を添えられたら。
そう思うのに僕にはどうやら人とうまくコミュニケーションを取る能力が乏しいようで、
仕方なく問われた内容に簡潔に答えだけを述べた。
『そうか。早く寝ろ』
じっと画面を見続けると、受信したRickyからのメッセージ。
うわ、うわうわ。
びっくりするくらい愛想のない文章だ。
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