アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう離れられなくて#57
-
奏楽さんの事を僕のセフレと勘違いしたらしいお母さんは、
チェーンのついたバッグを引っ掴んで閉店時間の迫るパチンコ店に行ってしまった。
「お前まだ高校生だからな?つけるもんつけな。」
って、目も合わさずに言い逃げしてった。
セクハラですか。
思春期の男子にマジあり得ない。
お母さんにはさ、わかんないでしょ。
奏楽さんの名前、知れた嬉しさなんて。
奏楽さんの漢字、知ってる特別感なんて。
名前なんて言うんですか?
なんてこれまでの人生で一度も聞いた事がない。
周りで本当の名前を隠してるような人はいないし、
いたとしても興味がない。
そんな中、僕以外の大勢の人が認知している”Ricky”
以外の名前を僕は知っている。
それでいいじゃんか。
それ以上を知ろうとしてしまうのは、
奏楽さんに今以上を求めているような気になって仕方がない。
そんなのは、申し訳ない。
奏楽さんはこんな僕の相手をしてくれていて、
こんな僕と会う為の時間まで作ってくれているのに。
僕は、お母さんみたいに自分に自信なんか欠片もないんだよ。
生きてる意味なんて一つもわからないから
そこに居る意味なんて一つもわからないから
今日みたいに僕に出来る事があるって、
すっごくすっごく嬉しかったんだ。
痛いのは好きじゃないし、苦手だけど。
嫌いじゃ、ないんだ。
奏楽さんをほんのちょっとでも救えたのなら。
それが僕の生きる意味になる。
スマホには、奏楽さんから一通のメッセージが届いていた。
帰ったら連絡しなきゃいけなかったのに、
奏楽さんに言われたことを忘れてついお母さんと話し込んじゃった。
最低だ、僕。
奏楽さんに言われたことも、守れないなんて。
”家には着いたか?”
ほら、こんな風に気を遣わせてしまうだなんてダメダメだ。
こんなんじゃ、近いうちに奏楽さんに呆れられて、
飽きられて、捨てられるのは目に見えている。
”着いてます、すみません!
お母さんと話してました…。”
言い訳に聞こえてしまうだろうけど、
経緯をちゃんと伝えるのは
僕の分際で隠し事をしているなんて思われたくなかったから。
奏楽さんが僕の私生活に興味がないのは僕が一番よくわかってるけど、奏楽さんに嘘をつきたくなかったから。
奏楽さんに、嘘をついていると思われたくなかったから。
不安材料は取り除かなきゃいけない。
少しでも長く、奏楽さんのそばに置かせてもらうためには。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
73 / 95