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なんて素敵な#5
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その日、家に帰ると
すぐに奏楽さんとのメッセージ画面を開いた。
学校で音を鳴らすのは無理だったから、
うずうずしながら慌てて家に帰った。
…出来たんだ。
奏楽さんの、新しい曲が。
“お前に一番に聴いてほしい。
お前のお陰で出来た曲なんだから。”
そんなメッセージが届いたのは今日の午後。
帰ったらすぐに聴きますと返信したものの、
帰るまで待つのが苦痛で苦痛で堪らなかった。
早く奏楽さんの声を聴きたくて
早く奏楽さんの生きる世界を知りたくて
下校時刻になれば、一目散に駆け出した。
扉を閉めた家の中。
奏楽さんにただいまも言わず、ただ、貼り付けられたURLを
震える指がタップする。
今から聴くのは、まだ誰も知らないRickyの新曲。
僕だけが知る事を許可された、Rickyの…
〜〜♪
多分、あの日車で少し聴かせてくれたであろうその曲は、
デモと呼ばれたそれとは大きく違っていた。
掻き鳴らされたギターの迫力ある音色
地の奥から響くようなバスドラムの心臓を打たれるような音
そしてその音達の上に乗るRickyの声色は色っぽくて切なくて
こんなに激しいサウンドの中、歌詞は失恋、そして未練を思い起こさせるものだった。
嫌い、大嫌いと言い聞かせても
簡単に心はそうはなれない
今も大好きで大好きで、写真を見て涙を流す
届かない思いを胸に抱いたその歌詞を曲に乗せ、
強く悲しく声を張り上げていた。
Rickyの声は魔法だ。
Rickyは凄い。
…言葉で言い表せないほどに。
“聴いたか?”
そんなメッセージが届いていた。
“聴きました。
すごく…すごく、心を揺さぶられました。”
貴方の声が
貴方の歌が
貴方の存在が。
日本中で騒がれている、日本中が染まっていく理由がわかりました。
奏楽さんはーー…。
Rickyは、他の誰とも比べ物にならない
素敵なアーティストだ。
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