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あ、そうだ。
弓弦君、
助けてほしいと教室内を見渡すと、弓弦君は窓側の端に肘をついて立ってこっちを見つめていた。
いつも僕なんかにも笑いかけてくれる笑顔はなく、蔑んだような冷めた視線だけを向けている。
え…
どう、したの。
「やったのおまえだろ、これ」
机に差し出されたのは、一枚の写真だった。
そこには、死んだウサギの耳を持った小さな手が映っていた。
こんなの、僕知らない。
僕はいきものがかりだったから、ウサギの世話は毎日しているけど
この連休はショッピングモール以外はずっと家にいたし学校には来ていない。
それに、ウサギは遠足に行く前の水曜日には元気に生きていた。
「ぼぼぼ、ぼ、ぼ、く…し、し、しら、知らな、」
痛む頭で懸命に発した言葉は、クラス中のみんなに笑われてすぐに消えた。
「嘘つくなよ!ここにお前のゴムがちゃんと映ってるだろ!!」
そう怒鳴られて写真を指さすほうに視線を向けると、ウサギの耳を持っている腕には
僕がいつもつけていたピンクのゴムが映っていた。
顔を出すのが恥ずかしいからという理由で前髪を伸ばしていた僕に
おばあちゃんが、邪魔な時は結いなさいと言って持たせてくれたヘアゴムだ。
でも、なんで…僕じゃ、
あ
そういえば、遠足の帰り道、バスで隣の席に座っていた弓弦君が伸びてきた髪が邪魔臭いと言ったので
腕に付けていたそれを手渡して…
「…!」
ということは、この写真に写ってるのは僕じゃなくて、
弓弦、君?
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