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担当医から相談されたのは、凪を俺の家で引き取って在宅介護しないか、というものだった。
「といいますのも、凪君、今でこそ周りの看護師や僕にも反応を示すようになってきましたが、あなたが帰ってしまった夜は、睡眠薬がないと全く眠らないんです」
「え?…それは、何か暴れたりではなくてですか」
「ええ、何か行動するって感じではないんですが、夜間の見回りに行くと決まって天井を眺めてずっと目を開けている状態だったんですよ。
初めは、たまたまかもしれないと思って様子を見ていたんですが、
試しに1時間おきに彼の病室を覗きに行くとずっと同じ体勢で目を開けたまま一向に眠らないんです」
・・・そんな話は初めて聞いた。
俺がここに来るのはいつも昼近くだったから起きていて当たり前だと思っていたし、夜も面会時間が終わる21時には出て行ってしまうから、
その後は普通に眠っているものだと考えていた。
それに、
「ただ、あなたが病室にいる間、たまに凪君が眠っていることがあるでしょう」
そうだ、俺が暇つぶしにでもと思って本を読み聞かせてやったりすると、
ウトウトしたようにそのまま眠ってしまうことが多々あった。
「恐らくなんですが、彼の体には以前から乱暴されている痕が残っていたので、昼間は普通に働いていたことを考えても、夜遅くに誰かが訪ねていて彼に乱暴していたと思うんです。そのために、夜は警戒して眠れないんじゃないかと思いまして」
確かにそうだ。
凪が清掃員として働いているときも朝から夜間までビルにいたことだってあるし、医者の言う通り、夜中に襲撃を受けてたのだとしたら眠れないのも合点がいった。
「ずっと睡眠薬や導入剤を使っていては治療の妨げにもなるんです。
自分で眠れるようにならなければいつまでも治療は終わらないし、
彼の体のためにもよくない。
そこで、もし彼を引き取ることができるなら、瀬田さんを一緒に暮らすことで睡眠障害を改善できるのではないかと考えておりましてね」
親類でもない赤の他人を引き取って一緒に生活するなんて通常では考えられないが、俺にとって凪の存在は既に生活の一部になっていたし、
毎日病院まで足を運ぶことを考えれば、在宅介護の方が楽そうだった。
入院費を考えると、在宅の方が三分の一程度の金額になるらしい。
これまでの治療費は、凪の祖父母が残した遺産があるようで
俺には支払いの義務はないと言われたが、別に金には困っていないし、
人一人を面倒見る余分な貯蓄は十分にある。
凪のことを考えると、俺は二つ返事で快諾した。
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