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勇者、魔王を脅す
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「いや、だからさ。アンタのことが気に入ったから・・・いや『気に食わねえから』俺のもんになれって言ってんだよ」
「頭沸いてんのか」
溜息というか、もう唖然だ。
どうしたらそういう話になる。
というかお前のものになるってそれどういう意味だ。
「どうもこうもないけど。俺の所有物になれっていうか、まあそういう感じ」
より一層意味が分からない。
人間ってそんなコレクター嗜好あるのか?
そりゃ魔王をコレクションすれば立派なコレクターだろうが。
それにしても悪趣味だ。
冗談にしてはセンスがなさすぎる。
これなら昔俺に喧嘩を売ってきていたどこぞのチンピラどもの方がよっぽどセンスがあった。
いや、アイツらもういないけど。
「話にならんな・・・早く帰れよ、身の程は弁えた(わきまえた)方が長生きできるぞ」
力量差は分かっているのだろう?
それも分かっていないような愚か者ならこのままここでさっきの剣のように塵にしてやっても構わないが。
それこそゲームの死体のように。
跡形もなく。
「いやいや、アンタに拒否権とか無いから」
またしても悪役みたいなことを言いながら、男は不敵に笑う。
拒否権?
そんなものお前に求めなくても常に存在している当たり前の権利だが?
「アンタ、見たところこの雑魚共には結構思い至る部分があるみたいだからな」
そういうと、男は笑った。
今ここにいる魔物の頂点よりも悪役らしく。
「言うことを聞け。じゃなきゃお前の可愛い部下たちが死ぬぞ」
男が消えた剣の代わりに取り出したのは、小さな短剣だった。
そんなもので俺が殺せるかよ。
それこそ、人間一人殺すのがやっとみたいな・・・?
「その通りだよ。この剣は人間一人殺せたらそれでいい」
男はその短剣を向けた。
俺ではなく、自分の胸に。
「・・・?」
自殺?
それがなんであんな御大層で傲慢な発言になる?
「俺の中には光の聖なる力が宿っている」
なんだそれ、そんなのありかよ。
聖なるって、むしろお前が浄化されかねないようなツラしてるじゃねえか。
「ハッ。そりゃ、アンタらに魔力があって俺に何もないってのは理不尽だろ」
人間に不思議な力が宿ってる方がおかしいだろ。
っていうか、俺たち魔族はそもそも人間に危害を加えるようなことはしないはずだが?
もしも俺の部下が勝手にお前を襲ったのなら、それは俺の監督不十分ってことで謝罪でもなんでもしてやるけど。
「謝罪かぁ、いいねえ。魔族の頂点が俺に頭(こうべ)を垂れて赦しを乞うなんて光景、絶対そうそう見られる光景でもないしな・・・まあ、その点は安心しろよ。アンタの部下は俺を襲ったりはしていない」
「はぁ?じゃあなんでお前はアイツらを襲ったんだよ」
「ただそこに存在していたから」
・・・。
サイコパスってやつか。
こういう奴に関わりたくねえんだよな。
何度も言うけど。
話が通じないってそれ、ただ厄介じゃねえか。
「んで?その聖なる力が何でお前の現状になるんだ」
余りにも話が長く、しかも一方的で身勝手だった為に俺はそろそろ我慢できなくなりつつあった。
正直、そんな意味不明な理由であんな凶行にはしったんなら虫唾がはしる。
わざわざ自分で短剣を突き立てるよりも先に、このまま一片の塵も肉片も無く消し飛ばしてやろうと、片手に魔力を(実際はノーモーションでできるが)溜め始めた時だ。
「おっと、だから話は最後まで聞けって」
男の持つ剣の刃が冷たく光る。
「俺が死んだとき、その聖なる力は俺の体から溢れ出す。際限なく、延々と」
「そしてその力は、アンタをハジメとした魔物に対して絶大な威力をー殺傷能力を誇る」
「まあいわば、俺自体が超強力な対魔物用の爆弾ってとこか」
「アンタの大切な部下をこれ以上死なせたくないだろ?」
男は笑う。
嘲笑う。
俺を見ながら。
そこには拒否権どころか選択権すら用意されていなかった。
「アンタに俺は殺せない」
男は鎧に刃を押し当てながら、高々とせせら笑うのだった。
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