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#放課後
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就業のチャイムが鳴り、星野とだらだら会話をしながら帰りの身支度をしていた。
星野はコンビニのアルバイトをしているらしく今日は休みだから遊びに行こうと誘われて断ろうとしたが、星野が狙っているクラスの女子とその友達も誘ったらしく数合わせに懇願された。
ビデオのレンタルショップのバイトが休みだったのであまり気は乗らなかったが誘いに乗り、適当な所で帰ることにした。
いつものゲーセン行ってカラオケコースなんだろうけど·····。
浮ついた星野の話を右から左に受け流しながら
教室を出て廊下を数歩歩いたところで制服の裾を引っ張っられる感覚を感じて立ち止まった。
振り返ると顔を俯けている眼鏡の男、葵が鞄を右腕に抱えながら立っていた。
男は喋らずにちらっと隣の不思議そうな顔をして見ている星野に目を向けると掴んでいた右手を離してはすぐさま俯いてしまった。
目の前の葵は鞄を両腕で強く抱き抱えて何か喋りたそうにしている。
「·····えっと·····。星野、後でいくから先行ってて。」
そんな葵の様子を察して、星野がその場から離れるよう促すと星野はなんの躊躇いもなく返事をした。
「おう、いつものカラオケだからな!
絶対こいよ!」
「分かってる。」
星野は自分に釘をさしてくると階段の方へと向かって降りていった。
星野がいなくなったのを見届けると葵と向かい合わせになる。
「すみません·····教室はジャージ借りたときに覚えていたので·····。どうしても、し、塩谷くんにお礼がしたくて。言おうと思ったらさっきすぐ帰ってしまったので言えなくて。」
「お礼って?」
「迷惑を掛けてしまったので。僕から何かお礼がしたくて·····。」
「いいよ。別にそれくらい。」
「僕の気が収まらないです。」
「あー·····でも。」
葵の表情を見ていると此方が遠慮しても口を一文字のにして食い下がる気配はないようだった。
ここで自分が「いいよ」と言えば堂々巡りになり話が終わらないような気がした。
「じゃあ、なんか奢ってよ。」
お礼と言っても特に思い浮かばず、手っ取り早いのがそれしかなかった。
「はい。」
此方が提案すると葵は笑顔で返事をしてきた。
その姿を見て胸がチクリとしたが、「絶対来い」と言われたがもともと乗り気ではなかった数合わせの遊びを断る口実ができたので丁度良かった。
「じゃあ、行こうか。」
「えっ·····。」
男の手を取ろうとした時、すっと避けられ驚いた表情をしていた。
「えっ·····って。今日じゃダメだった?」
「僕は大丈夫ですけど、塩谷くん予定があるんじゃ·····。」
「別にいいよ、断れば。乗り気じゃなかったし。」
「ダメです。先約があるならそっち優先して下さい。僕のことはいいので·····明日·····空いてますか?」
頑固だと思ったら真面目になって柔軟では無いんだと感じ、亨はギョっとした。
たかだか男子高校生の誘い。世の中にこんな約束をしっかり守るような真面目ちゃんがいたことに驚く。きっと要領良く立ち回れない質なのだろう。
「空いてるけど。」
「じゃあ明日また放課後きますね。」
葵はそう終始笑顔で言うとお辞儀をしては自分の横を通り過ぎていった。
何日に空けといてだとか明日の予定だとかそうゆうのを決めておく約束事が苦手だし同時に内心、面倒くさいと思った。
西田との約束事なんて守ったことなど片手で数えるくらいじゃないだろうか。
しかし、次の日の放課後自分は先に帰らず、自席から窓の外を眺めて、葵が教室に来るのを待っている自分がいた。
葵を見ていると何だか真面目に守らなきゃという気持ちになり、気づけば律儀に待っていた。
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