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勇者、繋ぎとめる
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そこから先は早かった。
昔から、手を出すのは早いのだ。
そしてそこから泣かせるのも。
玩具を取り上げたり、目の前で別の女とキスをしたり。
相手は誰でもよかった。
その当時、好きだった相手を泣かせられるのなら。
その一瞬、相手の中で一番大きな存在になれるのなら。
その後例外なく破綻するとしても。
だから、相手がされて嫌なことは把握できている。
自分がされて嫌な事、だなんて生ぬるいものではない。
というか俺なら嫌なことをされた時、それ以上のことを返せる自信すらある。
根本的に性格が破綻している。
その自覚はある。
だから、誰にも真に愛されることがないのも。
知っている。
知っているからこそ、一瞬でもいいから。
俺だけを見ていてほしいと願うのだ。
この目の前の男に有効なことはすぐ理解できた。
この男は、自分を蔑ろ(ないがしろ)にしてでも仲間を守るような男だ。
俺よりも勇者みたいなやつだ。
実際、俺にあるのは勇気ではなく蛮勇だ。
知っている。
分かっている。
だがそれがどうした。
今俺はここにいる誰よりも勇者だし、
この男はここにいる誰よりも魔王なのだから。
勇者が魔王を倒すのは当たり前のことだろう?
魔王を倒し、足元に這いつくばらせることは。
俺には赦された行為のはずだ。
だから俺は脅す。
勇者らしくない言葉を並べて。
勇者のように、魔王を倒すとうそぶいて。
俺の中に、血と同じように流れる聖なる力とかいうものを振りかざして。
ああ、本当に勇者みたいだ。
こんなに、魔王の絶望した顔を望む勇者もそうそういないだろうけれど。
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