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淫魔くん、お出かけする②
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平日ということもあり、比較的道は空いていた。
特に渋滞に巻き込まれることもなく、二人はスムーズに目的地へと向かっていた。
「わあ!あれ!あのお店テレビでみた!あ!あの杖持った白いひげのおじさんも見たことある!」
ルイは、初めての景色に興奮が隠せないようで終始窓から叫んでいた。玉木はそんな騒がしさに顔を顰めながらも、ルイの新鮮なリアクションに時折笑みをこぼす瞬間もあった。
そんな調子で車を走らせること30分。
お目当ての場所についたようで、玉木は駐車場へと入っていく。
「た、たた玉木さん…まさか、ここって…」
「おー」
「…す、水族館?!」
「うるせー」
車内に響き渡る声で叫ぶルイに、玉木は今度こそ大きく眉を歪ませた。
しかし、当の本人はそれどころではなく。
夢にまでみた場所がすぐ目の前にあるという事実に、心が躍りっぱなしである。
青と白を基調とした海を連想させる建物の外観に、入り口の手前には大きなイルカの模型がある。
そして大きく書かれた水族館の文字に、興奮がまるで治らない。
「え、えー!すごい、すごい、これが水族館…!なんで、いいの?!ほんとに、」
ルイは、信じられないといった顔で玉木を見る。
一緒に行く、という約束はしたもののまさか本当に連れて行ってくれるとは思っていなかった。
水族館なんて玉木のイメージではないし、それでなくても多忙なのだから何かと理由をつけて断られるだろうとさえ思っていた。
現地に着いてもなお戸惑いを隠せないルイに、玉木は居心地悪そうに頭を掻いた。
「…あー、たまたま職場のやつからチケット貰ったんだよ。まあ一応約束したし、有休も溜まってたし」
言い訳じみた言葉を並べたあと、一つ咳払い。
ほら行くぞ、と半ば無理やり話を終わらせて玉木は車から出ようとする。
それに慌ててルイも返事をして、車から降りた。
まるで照れ隠しのように、スタスタ歩く玉木のあとをルイはひょこひょこと着いて行く。
「ねえっ、ねえねえ玉木さんっ、」
「…なに」
「ぼく、すっごく嬉しい!ありがとう!」
心底嬉しそうな顔でお礼を言うルイに、玉木はまた短く返事をする他なかった。
ルイの純粋さゆえの真っ直ぐさは、容赦なく心を擽るのだ。
はしゃぐルイに歩幅を合わせて、入場口でチケットを出す。
案の定中学生に間違えられたルイは、目に見えて凹んでいたがこれに関してはフォローの仕様がなかった。
「ぼくってそんな幼いかなあ…」
「スーパー童顔だと思うけど。そもそも淫魔って年齢とかそういう概念あるわけ?」
「うーん…まあ一応…?生きた年数だけで決まるんだったら、ぼく玉木さんよりずっと歳上だよ」
「はあ?マジかよ。見えねー」
えっへん、と胸を張るルイに呆れ顔を向ける玉木。
外見のみならず内面も子供のようで、どうにも歳上には見えない。一歩間違えれば小学生と間違えられてもおかしくない。
目を離したら連れて行かれそうだ。
「で、なにが見たいの?好きなとこ付き合うけど、迷子にはなるなよ。探すのめんどくさい」
館内の案内板の前で立ち止まり、ルイに尋ねる。
ルイは、うーんと端から端まで丁寧に見たあと、「全部…」と小さくつぶやいた。
「んじゃあ案内のルート通りに進むか。イルカショーとかも見たいんだろ?」
「みたい!」
瞳をキラキラさせて頷くルイ。
(なんだか、今日の玉木さんはやさしい)
俺は車にいるから適当に見てこい、とか言いそうなのに…なんて、失礼なことを考える。
ルイは、少しでも玉木の気まぐれが長続きしますようにと願いながら後を追った。
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