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淫魔くん、お出かけする③
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案内板の通りに進むと、最初はクラゲたちが姿を現す。
様々な形や色、動きを繰り広げるこれらは魔界とやらにいてもおかしくないんじゃないかと、遠くから眺めながら玉木はふと思った。
(わざわざこんな、水族館なんて女とも行かねえのに)
たかだか居候の得体の知れない淫魔に、休日を割いているという事実がなんだかむず痒い。
小学生よりもはしゃいでいる姿を見るのは悪くないが…やはり柄じゃない。
玉木は、水槽にべったり張り付いてるルイの姿に思わず口元を緩ませた。
「満足したか?」
「うん!すっっごい楽しかった!」
「…だろうな」
一頻り館内を見て歩き、触れ合いコーナーでヒトデを触ってワーキャー騒ぎ、イルカショーで飛んでくる水飛沫に興奮したり、終いには売店でタコの帽子とジンベイザメのぬいぐるみを買ってもらったルイは、至極ご満悦だ。
どれだけ楽しかったかを、身振り手振りで大袈裟に伝えるルイに玉木は適当に相槌を打つ。
ふと時計を見ると時刻はもう17時を回っていた。
車に乗り込み、エンジンをかける玉木。
ジンベイザメと一緒に助手席に乗り込むルイを、邪魔だと一蹴する。
無慈悲にも後部座席へと投げられたジンベイザメにルイは嘆くが、大人しくシートベルトをする。
一緒に後部座席に乗るという考えはないのである。
「さて…このまま家帰ってもいいけど、どうする?どっか行きたいところあんだったら、1箇所くらい連れてってやるけど」
「…!海!海行ってみたい!」
「…今さんざん魚見てきたのに?」
「おっきい海がみたいの!」
えぇ、と思ったがこちらから提案した手前却下することもできず、玉木は渋々了承する。
「つっても、こんな都会に綺麗な海はねーぞ」
「うん。魔界の海も真っ黒だよ」
あっけらかんと言ってのけるルイ。
(それは汚ないというより、他の魔界的要因がありそうだけどな…)
内心そう思うも、話を掘り下げて興味があると思われても困ると口を噤む。
相変わらずタコの帽子を被り続けているアホそうな淫魔を横目に、玉木は車を走らせた。
到着したのは、それから15分後くらい。近くの海浜公園だ。
だいぶ薄暗くなってきたからか、カップルの姿が多い。
「わ!水族館と同じ匂い!」
「潮風だな」
「たしかにしょっぱい匂い!」
車から降り、公園内を走って海の方へと真っ先に向かうルイ。
本当はビーチに連れて行こうかと思ったが、昼間の方が良いだろうからやめておいた。
手すりの向こうから、一面に広がる海を見るだけだがルイは楽しそうだ。
カモメや船を見てキャッキャッしている。
あまりのはしゃぎっぷりに、通行人さえも笑われている。
タコの帽子は、さすがに恥ずかしいからと玉木が剥ぎ取った。
「キラキラして、きれー…」
人工的な光が、海に反射してキラキラと輝いている。
ルイはその光景をうっとりと眺めていた。
「ルイ、あっちにクレープ屋あるけど」
「え!食べたい!」
うっとりしてたのも束の間、玉木にそう声をかけられてルイは即座に海から視線を外す。
甘いものに目がない彼が、クレープという甘美な響きに食いつかないわけがなかった。
クレープ屋のワゴン車に並び、ルイはバナナチョコクレープを選ぶ。
初めて食べる!と、目を輝かせてぱくりと一口。
もうすっかり興味が海からクレープへと移っている単純な淫魔を横目に、玉木はコーヒーを啜る。
「美味しい!」
口周りにチョコをたくさんつけながら、クレープを頬張るルイ。
やっぱりこいつが俺より年上なんて納得いかねえ、と玉木は呆れた溜息をつくのだった。
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