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淫魔くん、お出かけする④
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辺りはだんだんと薄暗くなっていき、海を挟んだ向こう側の明かりが主張を強める。
普段仕事以外では専ら家から出ない玉木は、こんなに動いたのは久しぶりだと欠伸をこぼす。
あの出不精な玉木が水族館なんて誰と行くのか、とうざいくらい詰めてきた同僚に今のこの姿を見られたら、一体なんと言われるのだろうか。
ちょうどよく譲ってくれたはいいが明日また面倒なことになりそうだと今からうんざりする。
にやついた同僚の顔を思い浮かべたところで、玉木は考えるのをやめた。
「満足したならそろそろ帰るぞ」
車の方へと踵を返す玉木に、ルイも頷き後をついていく。
人はもうだいぶ疎らだった。潮風が少し肌寒い。
夜はデリバリーでもすっかぁ、なんて呟く玉木の服の裾を、ルイはくいくいと引っ張る。
「ん、」
「あのねっ、今日、ほんとにたのしかった!玉木さん、ありがとうっ」
「おー、よかったね」
「正直、玉木さん忙しいし一緒に行ってくれないと思ってたから、ぼく、一人で行こうと思ってたの」
玉木は、俺も最初は行く気はなかった、という言葉は飲み込んで静かに相槌を打つ。
ルイは、へらへら笑って何だか照れ臭そうだ。
「でも、玉木さんがいたから今日こんなに楽しかったのかなって…一人だったら、きっとこんなに楽しくなかった!今日、水族館に行けたのはもちろん嬉しいけど…、それよりも玉木さんとお出かけできたことの方がうれしいよっ」
ルイは、そう言い切って恥ずかしそうに口元に手をあてる。
尚も顔は緩み切ったまま。
言っちゃったー、なんて、言葉をオブラートに包むなんてことは知らない、ド直球の淫魔は一人でご機嫌だ。
玉木は、しばらくルイの顔を見つめて黙ったあと、徐にルイの手を掴みずんずんと歩き出した。
「ん、えっ、玉木さん?!」
その方向は明らかに車の方ではなく。
綺麗に整えられた歩道を突っ切り、何故か木々が生い茂る方へと歩みを進める玉木。
無言で手を引く玉木に、ルイは何か怒らせてしまったのだろうかと焦る。
(ま、まさか…森の中で殺される?!)
森というのはだいぶ大袈裟だが、ルイは物騒なことを考えて血の気が引いた。
どう頑張っても力では到底敵わないどころか、魔力で創られた紐さえも千切ってしまう相手に、どう太刀打ちしろと。
もつれそうになる足で玉木に必死についていく。
しばらく木々の間を歩き、そこそこ木が生えそろっているところで玉木は足を止める。
とん、と木を背に向かい合わせの状況だ。
ルイは、怯えながら玉木の顔を見上げる。
「…た、玉木さ」
「わり、勃った」
「………え?」
「お前の顔見てたらなんか。家まで我慢できる気がしねえ」
「え。…えええ?!」
少しも悪びれた様子のない玉木に、ルイは思わず声をあげる。
殺されるわけではないと安心したのも束の間、するすると玉木の手がルイの体を這う。
「ま、まって!玉木さん、ここ!そと!」
「うん。だから人が来なそうなとこまできた」
「そ、そういうことじゃなくって…!」
(どうしよう、玉木さんすっかりその気だ)
ギラギラとした目の玉木に、ルイは為す術なしかと焦る。
行為自体はやぶさかではないが、いかんせん場所に問題がある。
いくら人が来ないからといって、外で致すというのはルイの中のモラルが許さなかった。
何でスイッチが入ってしまったか分からないが、俄然玉木は戦闘態勢である。
突っぱねる手をいとも容易く取られ、するすると指を絡ませられ、啄むようなキスを何回もされ、
「…ルーイ、だめ?」
耳元で甘く囁かれたら最早ノーとは言えなかった。
(ぼ、ぼくの馬鹿~~!)
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