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淫魔くん、襲い受け②
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しばらくぐるぐる揺られていると、どこからか「ギャア゛ア゛ア゛」という叫び声が聞こえてくる。
この声が、魔界に着いた合図だ。マンドラゴラの悲鳴と言われているが、詳細は不明だ。
パッと視界が明るくなり、無重力空間から抜け出し重力に引っ張られる。
「わ、わわっ、と…」
何とか足から着地したルイは、ホッと息を吐いた。前はお尻で着地してしまったからだ。
着いた先は、通称魔界ステーション。
人間界からは比較的どこからでも魔界へと繋がるが、魔界から人間界への扉はこの魔界ステーション以外ない。
つまり、人間界へ行くにも、人間界から帰ってくるにも一度はここを経由しなければならないのだ。
魔力が強いと例外らしいが、ルイはそれには該当しなかった。
ともあれ、久しぶりの魔界のどんよりとした空気にルイは胸を躍らせた。
普段はあまり出さないようにしている羽根を存分に使い、パタパタと飛びながら自宅へと向かう。
空間魔法を使って自分の家へループしても良かったのだが、せっかくなので久しぶりの魔界を飛んで見てまわりたかった。
そこまで街に大きく変化はないが、すっかり人間界に慣れてしまっていたルイには、見慣れた街のはずがやけに新鮮に思えた。
そうして、たっぷり時間をかけて自宅へと帰ってきたルイ。
アポなしで来てしまったけど誰もいなかったらどうしよう、と今更なことを考えながら恐る恐る家の扉を開けた。
「…た、ただいまぁ…」
家の中はシンとしている。
ルイの家系は皆淫魔なので、もしかしたらこの昼の時間帯は寝ているのかもしれない。
そう思いながら、自分の家なのに身を小さくしながら廊下を進む。
すると、ガチャリとリビングの扉が開いた。
「…るいさま?」
「…あ、」
「っっ!!るいさまー!!」
扉から出てきたのは、使い魔のピノだった。
ピノはいわゆるアライグマのような姿で、二本足で立ち、赤色のアロハシャツに膝上の白い半ズボンを身につけている。
勢いのまま抱きついてきたピノを、ルイはよろけながらも何とか受け止めた。
「ピノ!久しぶりだねえ」
「ぴのはずっとるいさまにお会いしたかったのでございます!」
拙い敬語を使いながら、ピノはルイに力強くしがみつく。
ルイが玉木の元で暮らし始めてもう既に2ヶ月は経過している。
この世に生まれてから1日とルイと離れたことのなかったピノは、その2ヶ月が永遠の時のように感じた。
ルイから供給される魔力で、元気でいることは知っていたが実際にその姿を見るのはまたワケが違う。
突然の主人の帰宅に、ピノは大袈裟なくらい歓喜した。
しばらく廊下で抱き合っていた二人だったが、ピノが作り途中であった料理が沸騰していることに気付き慌ててリビングへと駆けて行った。
ルイがいなくなったこの家では、今はピノが代わりに家事を行っているらしい。
ピノの後を追ってルイもリビングへと向かう。
出してくれたお茶をお礼を言って受け取り、ソファに腰をかけた。
玉木の家にあるソファは少し固めだから、よく座り慣れたはずの実家のソファなのにその柔らかさによろけそうになった。
「それにしても、るいさまはなぜお戻りに…?ぴのは嬉しいでございますけど…」
火を止めて、ルイの元へ駆け寄ったピノは向かいの床に座り込む。
素朴な疑問にルイは飲んでいたお茶を置いた。
「…そうだった!ピノ、人間の姿になれる?」
「はい!…えと、これでよろしいですか?」
本来の目的をすっかり忘れていたルイにそう頼まれたピノは、たちまちぽんっという音と共に子供の姿に変わった。
人間でいうところの、小学生高学年くらいだろうか。
その姿を見たルイは、ほっと息を吐いた。
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