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菫玲先輩の部屋を後にしたその足で、俺は直澄先輩の部屋へ向かった。
けれど直澄先輩は部屋にいなくて、少し考えて、テラスに向かった。
そこに、直澄先輩はいた。
テラスへの扉を開けると、直澄先輩がこちらを向いて、俺の姿を確認すると笑った。
こんな風にふつうの、なんてことない笑顔を見ることが出来るようになった。
一年前には想像も出来なかった。
「どうしたの?」
「その、会いたくなって…部屋に行ったんですけどいなかったので…」
「連絡してくれれば良かったのに」
「でも、なんとなくここにいるかなって…」
俺が言うと直澄先輩はまた笑って、手招きした。
近づくと腕を掴まれ引き寄せられると、そのまま抱きしめられた。
「っ…先輩」
「俺ね、もうちゃんと笑えないんじゃないかって思ってた」
先輩は、俺を抱きしめたまま話し出した。
それは小さな声で、聞き漏らさないように耳を傾ける。
「飛世が、記憶を取り戻したら、もしかしたら…って思ってた。でも、そうはならなかった。俺の気持ちは、灰凌から動かなかった」
そこで、直澄先輩は息を吐いた。
「灰凌のこと好きになれて良かった」
その言葉に、涙を流さずにはいられなかった。
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