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先に俺の元へ来たのは、
「菱沼くん…」
「…」
菫玲先輩だった。
「菱沼くん、あのねさっきのは」
「いいです。聞きたくないです」
「っ…僕、藍野くんが忘れてるなんて知らなくてっ…」
「聞きたくないってば!」
せっかく涙が収まったのに、また涙が溢れた。
「菱沼くん」
「やだっ…もう、やだ…」
「すみません、菫玲先輩。今日は帰ってもらえますか?」
冷静な声が俺の頭上から聞こえてきて、顔を上げるとそこには紅輝が立っていた。
「椿葵くん…でも、ちゃんと聞いてもらいたいことが…」
「多分、この今の灰凌に何話しても意味ないと思いますよ」
「…」
菫玲先輩が俺を見た。
俺はすぐに視線を逸らした。
「っ…ごめんね。でもひとつだけ…さっきのは誤解だから。僕は藍野くんとキスしてないから」
「っ…」
「は?」
「じゃあ、僕は行くね。ちゃんと話したいから、連絡して欲しい。藍野くんとも話すから」
これ以上、直澄先輩と関わって欲しくない。
でもそれは俺の我儘で、今の直澄先輩はきっと菫玲先輩と…
「泣かせちゃってごめんね」
菫玲先輩の声は、俺には届かない。
姿が見えなくなってから、紅輝が隣に座って俺の背中を優しく撫でた。
「キスって、何の話?」
「直澄先輩の病室で、2人が…」
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