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「見たの?」
「菫玲先輩の後ろからだけど…」
「でもさっき菫玲先輩は誤解って言ってた」
「…そうかもしれない。でも、直澄先輩が菫玲先輩の腕、掴んでた」
そう。
たとえあの時、キスしていなかったとしても、きっと直澄先輩は菫玲先輩にキスしようとしてた。
それはきっと事実だ。
「それは仕方ないでしょ?だって藍野先輩は、今菫玲先輩と恋人同士だと思ってるんだから」
「…」
「だから、言った方が良かったんだよ。菫玲先輩とは別れて、自分と付き合ってるって」
「…そうだね、言えば良かった。でも言えなかった」
今傷ついてるのは、俺だけで済んでる。
いや、菫玲先輩も傷ついてるかもしれない。
「灰凌…」
紅輝が俺の頬へ手を伸ばしてきて、涙の跡を拭った。
「菫玲先輩は、直澄先輩に付き合ってないって、話すのかな…」
「俺は話すと思うよ」
話したところで、直澄先輩が俺のことを思い出すわけじゃない。
「…俺、正直まだ菫玲先輩のこと信じられてない」
「それは仕方ないでしょ」
「っ、最低じゃない?あんなに優しくしてくれてるのに」
「でも、一度は菫玲先輩に傷つけられてる」
「そ、うだけど…」
「俺はあの時のこと許してないし、今後許せるとも思わない。灰凌は」
「うん、許してる」
「だろうね。だから、俺は許さない」
ここまで俺の味方でいてくれる紅輝。
「優しいな、紅輝は」
「そうでしょ」
「ふっ、自分で言うの…」
「良かった、やっと笑った」
紅輝は安心したような表情で、俺の目尻に触れた。
俺はその気遣いにまた涙が出そうになった。
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