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「ピアス?」
「はい、俺がクリスマスにプレゼントしたんですけど…」
「もしかしてこれかな」
そう言って直澄先輩はサイドテーブルの引き出しを開いて、透明のビニールの袋を取り出した。
そこには、俺が渡したピアスが入っていた。
ただ、それは…
「事故の時につけてたみたいなんだけど、衝撃で壊れちゃってて…そっか、これは灰凌くんがくれたものだったんだね」
石の部分は割れているし、ピンのところも曲がっていて、もうつけられそうになかった。
そして、そのピアスを見ても直澄先輩は何も思い出してはいないようだ。
「壊れちゃってますね」
「ごめんね。せっかくくれたのに」
「いえ、仕方ないですよ。またプレゼントするので、それは捨ててください」
「…捨てないよ」
「っ…でも壊れてますよ?」
「それでも捨てないよ。灰凌くんにもらったものっていうことは思い出せなかったけど、すごく大切なものだっていうのは思ってたから。捨てられないよ」
「っ…」
「灰凌くんって泣き虫だね?」
「っ先輩のせいですよ…っ」
ボロボロ涙が溢れる。
「ふっ…こっちおいで」
近づくと、直澄先輩は俺の涙を拭って、ぽんぽんと頭を撫でた。
「早く思い出したいな」
そう思ってくれるだけで嬉しい。
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