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今の直澄先輩は、まだ菫玲先輩のことがきっと好きだ。
たまに、窓の外を切なげに見つめている姿を見かける。
目を覚ましたら、自分の恋人のはずの相手は別の相手がいて、自分にも知らない相手がいたって、そんなの誰だって困惑する。
俺にできることはなんだろう…。
そして数日後、直澄先輩が退院した。
次の日に直澄先輩から連絡が来た。
話がしたいという内容だった。
事故に遭ってから、初めてメッセージを受け取った。
直澄先輩の地元で待ち合わせすることになった。
「こんにちはっ。退院おめでとうございます!」
「ありがとう。灰凌くんは?調子はどう?」
「もう大分良くなりました」
「そっか、良かった。それじゃあちょっと移動しようか」
そう言って俺たちは近くの公園に向かう。
二人並んでベンチに座った。
俺たちの間には隙間がある。
「俺ね、最近ずっと考えてたんだけど…」
「…はい」
深刻そうな表情に首を傾げる。
「俺たち、一度別れた方がいいと思うんだ」
「っ…!」
予想していなかった言葉に声を出すことができない。
「灰凌くん、たまに俺のこと見て泣きそうになってることあったんだけど、気づいてた?」
俺は首を振る。
「俺ね、その顔見て早く思い出したいって思ってたんだけど、同時にね、苦しませたくないとも思ったんだよ」
「俺は、苦しくてもいいんです!」
「俺が良くない。入院中多くの時間を一緒に過ごして、灰凌くんがすごく良い子だっていうのは十分に分かった。思い出せないことが辛いけど、それ以上に苦しませてることが辛い」
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