アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7.安心は一時
-
携帯を閉じて、部屋の電気をつけ、寝室を出る。
そういえば、水も飲んでいなかったや。
そう思い出して、傑にもらったスポーツドリンクを口へと運ぶ。時計の針は深夜2時を指そうとしていたが、随分寝た分、もう寝れないような気もしてきた。
あれ、荷物どこやったっけ。
帰ってきてからなにもしていなかったことに気づき、せめて明日会社に行けるようにしなきゃ、とカバンがあるだろう玄関へと足を運んだ。
ガサゴソとカバンを漁る。
そして気づいた。
「…定期、ない。」
そう、カバンに付けていた定期のカードが取れていたのだ。
どこに落としたのだろう。
ふらついて出た電車に、倒れた駅のベンチ。病院に運ばれる時。
その中のどこかで落としたのだろうが、どこかは検討がつかなかった。
「傑に…、いや、だめだ。」
連絡しようと急いで握った携帯だったが、迷惑をかけてしまうことは明白だ。すでにこんなに迷惑をかけてるのだから、もうこれ以上は頼っては流石の傑も呆れてしまうだろう。
… 独りは、もう嫌だ。
明日ひとりで探そう。
そう思ったはいいが、駅に近づくなんて怖くてできない。
どうしよう。
ぬぐえない不安の中で、身を休めるためにソファに座った。膝を抱え、自分のぬくもりを抱きしめる。
もう定期なんてどうでもいいのではないか。
取りに行かなくったて、そんな困るわけでもない、、ような。
また再会するのが最悪の展開だ。誰とは言わないが。
暫くの間、思考を巡らせていたが、睡眠を蝕む体に、いつの間にか意識は吸い取られていった。
鳥のさえずりとぬるい日差しに起こされたのは、朝六時を少し過ぎた頃であった。ソファで寝たこともあって、身体が軋み、手足はしびれを伴うような気もする。
既に朝日は顔を出し、晴天が広がるというのに、昨日の出来事に俺は憂鬱さを感じていた。
…そういえば。
昨日から洗っていない体が、何故か異様に汚いもののように思え、急いで風呂へと駆けようとした、その時。
プルルル…
響いた携帯電話の音に、傑かと思い、開いた画面に表示されてた番号は、全く身に覚えのないものであった。しかし、万が一会社関係であった場合、悪い印象がついてしまうと考え、恐る恐る通話ボタンを押した。
「あ、もしもし。」
響いたその声は
間違いなく
凛だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 12