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10.飢えた温かさ
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傑から逃げるように入った風呂場で、火照った頬の冷ますように、少し冷たい水を頭から被り、息を吐いた。
…っあせった…。
まさかお姫様抱っこをされるとは夢にも思っていなかった俺は、未だにどくどくと心臓を走らせていた。
そして、
あんなに人が温かいものだなんて、俺は初めて知ったんだ。
人に触れられることに酷く敏感で、嫌悪さえ抱いていた俺は、すぐるに触れて、嫌どころか嬉しいと思ったことに、酷く動揺した。
「…あたたかかったんだよ、、うん。」
自分でもわけわからず、変に納得させるように頷いていると、なぜだか、シャワーに涙が混ざっていたことに気づいた。
「僕が、愛されて言い訳、ないのになぁ…。」
自分に言い聞かせるだに、呟いたその言葉にチクッと心臓が痛み、その思考をかき消すように慌てて身体を洗った。
「ごめんね傑、汚して…。あの、これバスタオルだから、入ってきて。」
お風呂から出た俺は、リビングにいる傑に声をかけた。少しの気恥しさに傑の顔を見れず、バスタオルを押し付けて、風呂場へと誘導した。
「わり、借りるな。」
そんな俺を見て、思い出し笑いするように俺の頭をポンポンと撫でて傑は風呂場へと向かった。
辺りを見渡すと、床は綺麗に掃除され、窓は開けられ、換気されていた。嫌な匂いももうどこにもなく、涼しげな風が入り込んでいた。
「掃除、、してくれたんだ。」
何もかもしてくれた傑に、今になって呼んでしまった事にすごく後悔をし始める。時計の針は既に十一時を指しており、とっくに出社しなければいけない時間を過ぎている。
きっと、「大丈夫。」と言ってくれた傑は会社にもしっかり連絡してくれてあるのだろう。遅刻を咎める連絡は一切かかってこない。
そういえば、、携帯。
綺麗にされた携帯を恐る恐る開くと、傑からの不在着信が5件ほど光っていた。
だいぶ心配を掛けたことに、申し訳なさを感じ、泣きたくなる。
そして、その下にもう1件。
凛の声がした携帯番号からの不在着信が来ていた。
朝のことを鮮明に思い出した俺は、自然と息が上がり、息が乱れ始めるのを感じた。
なんでこんなに弱いんだ。なんで。
手にある携帯を手が白くまで強く握りしめていると、不意に重なる手と、肩に落ちる雫を感じた。
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