アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
育成と情
-
翌朝、骨董商は考えた。
少年を現金で買った骨董商だが、彼には小児性愛や弱い者を痛めつけるサディスティックな性癖はなかった。衝動買いしてしまったものの、少年をどうしようか具体的な考えはなかったのだ。
色々考えても仕方がない。
朝食を作った骨董商はリビングの机の上に置いて、戸惑う少年に食べるように促した。
骨董商の向かいの席に座った少年は酷いものだった。両手で食器や食べ物を掴み、口を皿に近付ける所謂犬食いという奴だ。少年が食べれば食べる程、服や机が汚れていく。確かに、この国では食事は手掴みが基本だが、これは別次元の問題だ。思わず骨董商が叱ろうとした時、少年の瞳から涙が溢れた。
「美味しい……うぇ……美味しいよう……」
その様子を見た骨董商は、少年に対して父性のような物がわき上がり、この憐れな少年に教育を施してやろうと決めた。というか、それしか思い付かなかった。
その日から骨董商は少年を教育したのだが、少年は骨董商が予想するより遥かに賢かった。
二言三言質問に答えれば、直ぐにその真意を理解して納得する。礼儀作法や一般常識を教えて1週間も経つと、とても礼儀正しい子供になった。
次に家事を教えると、すんなり身に付ける。少年の料理の腕は上達し、近所の召使い達といつの間にか交流して新しいレシピを身に付けていた。骨董商は少年の事がバレないか焦ったが、少年は常にサングラスを身に付けていた。そして、周りの召使いには、弱視の少年を優しい屋敷の主が雇ってくれたと説明していた。
礼儀正しい少年は召使い達に可愛がられているらしく、自然とその主である骨董商の評判は良くなり商談が上手くいくことが多くなった。
何よりも骨董商を満足させたのは、少年の忠義深さだ。
骨董商がどんなに早く起きようとも、溌剌とした笑顔で身支度を手伝い朝食の用意をした。
この国には弁当という文化はないが、骨董商がそれを求めると嫌な顔を一つせずに用意した。
骨董商がどんなに遅く帰っても、少年は嬉しそうに満面の笑みで出迎えてくれるのだ。
まるで留守番をしていた子犬のようで、疲れていた骨董商は少年を見ると思わず笑顔になった。一番の目的だった、孤独の解消は充分に果たされていた。
少年に文字を教えると瞬時に取得し、それからは自分で書物を探して学ぶようになった。独力で会計管理のやり方を身に付けた少年は、骨董商の代わりに煩雑な事務処理を行うようになる。
骨董の仕事にのみ集中できるようになった骨董商は、少年はいわゆるギフテッドではないかと考えていた。神の如し才能を持つ子供に授けられる称号は少年に相応しいし、そんな子供を安く買えた自分はなんと幸福なのだと思い、心の中で高笑いをしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 6