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「ご馳走さまでした。
ずっごく美味しかったです!」
「そりゃ良かった。
先に皿とフォーク持っていってくれるか。」
「はい。
わかりました。」
夕飯の食器を下げたら冷蔵庫から白い箱と麦茶のペットボトルを取り出し持っていく。
皿とフォークを並べていた三条はケーキ屋のロゴに、わくわくしした顔をしみせた。
屈託のないその顔は幼いが、高校を卒業した大人だ。
ケーキボックスから中身を取り出すとその顔は更に彩度を増す。
「遥登、誕生日おめでとう。」
「ありがとうございます!
本当に名前書いてあります!
もう19ですよ。
これ、正宗さんが頼んでくれたんですか?」
「まぁな。
蝋燭もあんぞ。」
数字を型どった蝋燭を刺すと三条はじっとケーキを眺めた。
まるでケーキを目に焼き付けるように。
吸収する時のように。
そんな恋人を見守る長岡は使う事がなくなったライターを手の中で弄ぶ。
コロッと転がしながら喜悦の色を濃くした横顔を眺め、三条と同じだけ満ち足りた顔をする。
ふと空気が軽くなり、長岡は蝋燭に火を付けた。
「誕生日おめでとう。」
「沢山ありがとうございます…!」
嬉しそうな顔が自分を捉え何度も目かの感謝の言葉と共にとびきりの笑顔が咲き乱れる。
小さな部屋いっぱいのしあわせと愛情。
「ホールのまま食おうぜ。
食えんだろ。」
「贅沢ですね!」
「恋人の誕生日だからな。
奮発するよ。」
早速フォークを突き刺し三条に食わせると、隣からしあわせそうな声が聴こえてくる。
ころころと鈴の様な声が心地良い。
ど真ん中を掬うと三条の口に詰め込んだ。
溢れるクリームを指で抑え、ぺろりと舐めると何時も通り面白い顔が見れた。
これでこそ三条だり
「ほら、これは遥登の分な。」
そう言って三条の方に寄せられたチョコレートのプレート。
はるとくん おたんじょうび おめでとうと平仮名で書かれている。
書いた側はまさか19歳の誕生日だとは思わなかっただろうそれを三条は半分に折ると、大きい方を長岡に渡した。
それを長岡はじゃあ俺のと交換、と小さな方と交換する。
「ありがとな。
美味しくいただく。」
「俺こそ、ありがとうございます。」
口いっぱいにケーキを詰めしあわせそうな顔をカメラで切り取った。
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