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大学生、いわく
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ことの発端は・・・何だったかな、あんまり思い出せない。
それくらい、突然だった。
「お前、一人暮らしだったよな」
「は・・・?え、まぁ、うん」
大学生である俺が、大学の講義後、荷物を片付けていた時、突然声をかけてきたのが、そいつだった。
そいつも俺と同じ大学生で、もっと言えば、俺と同じ学部だった。
「お前ん家、泊まらせてくんね?」
「はい?」
ちなみに初対面である。
初対面の相手に家に泊まらせろとか、言えるものだろうか。
俺には理解できなかった。
というか耳を疑った。
何言ってんだコイツ。
つかお前って、お前。
「え、何、どういうこと。ちゃんと説明してくんないと分かんないんだけど」
ちゃんと混乱している俺である。
説明を求める。
「いや、今日、帰る家なくなってさあ。困ってたんだけど。お前の家、一人暮らしだったよなって思って」
家ってそんな簡単になくなるものなんだろうか。
何があったんだ。
っていうか何で、俺が一人暮らしって知ってんだ。
「いや、それは最初の挨拶でそんなこと言ってたから」
・・・そういえば言ったような気がする。
大学に入って一番最初の自己紹介で、何かしら言わなくちゃならなくて。
それでネタに困った俺は一人暮らしです、みたいなことを言った気がする。
そんなこと、普通覚えてるか?
「女子の家に行くのはマズいし、他の奴にもあたってみたけど、断られてさ。もうお前くらいしかいないんだよ」
やけに砕けた話し方をしてくるけれど、何度も言うように初対面である。
初対面というとおかしいのか?同じ学部なんだし、相手は俺の自己紹介を知っているようだし。
でも、関わり合うのは初めてだ。
というか、どんだけ回って俺のとこまで来たんだよ。
いやいや、そもそも大学生で同居とか結構厳しいだろ。
「もちろん家賃は半分出す。家事とかも分担する。だから頼む」
この通り、と男は俺に頭を下げた。
見るからに困っているらしい。
困っている人には親切にすべきだ。
でも。
「・・・俺が誰か知ってて言ってんの?」
俺が、誰か。
俺は全恋愛者だから、男も恋愛対象になる。
それで、ゲイだとか言われることがある。
少なくとも陰で、俺と関わりのない奴はそう言っている。
実際はゲイではないのだけれど、否定するのも面倒だし、男だって好きになれるのは嘘ではない。
同性愛者は立場が未だに弱い。
少数派だからだ。
そしてそういう人は偏見にあったりしやすい。
特にゲイは。
何故か『男全てに好意を抱く、ケダモノ』みたいに思われていたりすることも少なくは、ない。
まあ言い方は極端だけれど。
でも、男だったら誰でもいい、みたいに思われてたりすることはままある話だ。
そんな訳ないのに。
異性愛者だって、誰にでも恋するわけではないみたいに、同性愛者だって好きになる人とそうじゃない人はもちろんあるのに。
それでも理解されないし、理解しようとしない人がいる。
そして差別的に思われることも。
そんな俺の事情を知って、俺に同居とか申し込んでいるのか?
全く理解のない人からすればある、『貞操の危機』みたいなのを危惧しないのか?
・・・いや、実際俺には関係のない話だけれど。
だって、俺には性干渉を嫌っているから。
だから事実上、その心配は一切ないのだけれど。
それでも、外での俺の評判は、特に、その性思想は決して良いものではないはずなのだけれど。
「新堂(しんどう)、だよな?あ、俺は瀧(たき)、よろしく」
まるで友達を作るみたいに、言われたその言葉から、真偽は、心中は全く察せなかったけれど。
それでも、何かに絆されて、差し出された右手を右手で握り返してしまったのが、運の尽きというか。
全ての始まりだった。
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