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同級生、いわく
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「そこ、適当に座ってて」
「お邪魔します。お、部屋綺麗にしてんだな」
何でこんなことになってんだろう。
首を傾げながら俺は戸棚を開く。
コップとかあったっけ。
一人暮らしになってから、別に呼ぶ相手もいないし、一人用の食器しか置いてなかった気がする。
「物が少ないからな。・・・麦茶しかねえけど」
「それでいいよ、おかまいなく」
できれば俺だって構いたくないけどな。
「・・・つか。今までどうやって暮らしてきてたんだよ」
お茶を出して俺も瀧の正面に座り(うちの机は小さな一人用だから仕方ない)聞いてみる。
ちなみにコップはこの前電気屋でもらったやつがあった。
ほとんど話すのは初めてのはずだけど、そんなに話しにくい感じでもない。
それがコイツの人受けするところなんだろうけど。
「普通に友達の家とか。あと身体だけのお友達とか」
「それは・・・」
いわゆるセフレってやつだろうか。
大学に入ってから、頻繁ではないにしてもたまに聞く単語だ。
俺には余りにも縁遠い言葉だけど。
サラリと出てきて、ちょっと面食らったけど。
「・・・ま、モテるやつはそうだよな」
俺の言葉に瀧はちょっとだけ笑って、まあなと言った。
否定はしないらしい。
「いや、まあ要は、さ。俺ってすげー都合の良いやつなんだよ」
都合。
それは誰の?
「ま、どっちもでもあるけど。俺、恋愛感情持たねえから」
恋愛感情を持たない。
そりゃ、セフレってそういう相手なんじゃねえの?
いや、知らないけど。
「俺にとっちゃ、誰でも『セフレ』なんだよ」
「・・・?」
「後腐れなくセックスできる相手って、結構重宝されるんだよ」
後腐れ。
後々の恋愛のもつれってことか・・・。
「ややこしいことにはならない、痴情にもつれない、キモチイイだけの相手」
何ならお前の相手してもいいぜ?
部屋を提供してくれるお礼に、身体で払ってもいいんだぜ。
軽々と言われたそれに俺は静かに答える。
「俺、精神愛者だから・・・セックスはできない」
「・・・へえ、そんなのあるんだ」
意外と、強く否定するわけではなく、瀧はすんなりとその言葉を受け止めてきた。
もっと罵倒されるかと思ったけど。
「いや、ここまで正反対だと逆に何も思わねえよ。理解はできねえけど、否定しようとは思わねえ」
「でも普通じゃねえだろ?」
「そんなの俺も普通じゃねえし」
つか。
瀧はコップを片手に俺に問う。
「さっきの言葉に対して、同性だからどうだとかは思わねえんだな」
・・・ああ。
普通はそっちが先に出るのか。
俺には重要じゃねえからな、ソレ。
「・・・全性別恋愛者ってやつだよ」
「・・・男も女も関係なく恋愛対象ってことか」
「まあ、そういうことだな。性別はどうでもいい。でも性干渉は性別関係なくできない」
言いながら、何でこんないきなり込み入った話をしてんだろうと思った。
思ったけど、でも最初に話しておくべきかもしれない。
特に相手が俺と正反対の性嗜好なら。
「軽蔑するならしてくれてもいい。慣れてる。嫌なら別の同居相手を探せばいい。俺はそれを咎めたり(とがめたり)しない」
別に。
瀧はそういった。
特に考える素振りもなく。
「俺もその点は一緒だから何も思わねえけど」
「え、どの点」
「性別関係ねーってやつ」
「・・・へえ」
つまり、さっきの言葉はまるきり冗談ってわけでもなかったのか。
「気持ち良ければいいんだよ。男だろうが女だろうが。でも恋愛感情をもつのはNG。それは俺の知るところじゃない」
こんなにも似ていて、こんなにもかけ離れた考えを持つ奴は初めてだった。
「俺たちは互いの性嗜好に何も言わない。それルールにしねえ?家賃折半、家事折半、性事情に口出ししない。最低限、それだけ」
「・・・ああ」
こうして二人の、余りにも正反対で、むしろその極端さは似ているような、そんな奇妙な同居は幕を上げた。
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