アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
男体を手に入れたハル-2
-
ガンガンガンガンガン
「おーーーい!ここを開けろ!誰かいないのか?おーーーーい!」
渾身の力を拳に込めて外から鍵が掛けられた扉を叩きつけ、大声で叫び続けることおよそ三分、元の世界ならそろそろカップラーメンが出来上がる頃合いだなと思ったその時、数名の足音が速歩で近づいたかと思えばあっさりと開かれた。
「な、なんと……なんと!なんとぉぉぉ!」
開け放たれた扉から零れそうな程に目を見開いて驚きを全力で表現した男が現れて、ハルを指さしながら同じ言葉を繰り返している。
その男はアニメやゲームでもお馴染みである聖職者と思われる。
長くゆったりとした艶のある白色の衣を身にまとい、その上には袖口の広い貫頭衣に外付のフードを付けたものを着用し、肩から帯状の肩掛け式ストラをかけている。
「あんた誰?」
見た感じ質の良さそうな生地と装飾品を付けていることから、身分の高そうな人だと想像もつくのだが、今のハルは望まぬ異世界転移を強制的に行われた上に、勝手に怪しまれて囚われたのだから機嫌の悪さはピークに達している。
少し上にある紫色の瞳を睨みつけていると、彼の背後に付き従っていたいかにも脳みそまで筋肉で出来ていそうな屈強な体の騎士が、ピカピカに磨きあげられたブーツの踵を鳴らしながら前に迫り出してきた。
「メイロード様に向かってその口の利き方はなんだ!失礼にも程があるぞ!」
「ぁあ?知るかよそんなもん!こちとら勝手に召喚された挙句に囚人扱いだぞ!そいつが誰だか知らなくて当然だろうが!」
怯むどころか敵意を剥き出しにして突っかかってきたハルの勢いは、脳筋男をたじろがせた。
「なんと、召喚ですとな?何処でその情報を得たのか答えていただきましょうか。諜報員の疑いがある以上、此方も見逃すわけにはいきませんからね」
暑苦しい騎士を慌てて押し退けたメイロードと呼ばれる男が、言葉の内容とは違って興味津々の様子で食いついて来た。
「ここへ飛ばされる前に『神の使い』って女の人に言われたんだよ。しかも僕は巻き込まれた被害者だぞ!お前らの召喚が未熟だったせいでな!!!!!」
「うぐぅ」
ハルの言葉を聞いて黙り込んだ男は、どうやら思い当たる節があるのだろう、途端にシュンと肩を落として静かになってしまった。
銀色の長髪を無意識に弄りながら、何やら考え出したメイロードの姿を見て、傍に控えている騎士達も戸惑いを見せはじめた。
ハルと対峙した騎士に至っては若干顔が青ざめている。
「ここでは埒が明かない。僕を美琴の所に連れていってくれるよな?」
目は怒ったままで口角だけを上げたハルの笑顔は、容姿が整っているだけにかなり恐ろしいものであった。
「牢ってさ、普通は地下に作らない?」
「もちろん地下にもございますよ。其方はジメジメとした悪烈な環境で、出来れば近づきたくはありませんね」
ハルが軟禁されていた清潔な部屋は、やはり牢であることには違いが無かったのだが、二階に位置しているので背が高く力の強いものならば、あの小窓からの脱出も不可能では無いはずだ。
清潔な白シャツと黒のシンプルなトラウザーを与えられ、それらを身につけたハルの隣に肩を並べて歩く、男にしては綺麗すぎるメイロードの横顔を眺めながら、不思議に思ったことを口にしてみた。
ハルが抵抗をしなかったことも要因ではあるが、特に無理な拘束もされずに騎士に前後を挟まれただけの移動ですみ、少しばかり機嫌は良くなったのだ。
「じゃあ何故僕をその地下牢へ閉じ込めなかったのさ。あの高さなら逃げられたかも知れないんだよ?」
小窓に背が届かないならベッドを移動して踏み台にすれば良いし、もし鉄ヤスリでも隠し持っていればあの頑丈そうな格子すら、時間はかかるだろうが切断できないこともない。
「まさか!そんな野蛮なこと!魔物でも無いのに地下牢なんて入れませんよ」
ハルの質問に驚いたのか立ち止まってしまったメイロードを促して再び歩き出すと、それに、と自信満々の口調で話を続けた。
「筆頭魔術師のモナ様が、自らの手で掛けられた結界を超えられる者など、普通は居りませんからね……普通は」
「結界……なるほど。この世界は魔法が当たり前のように存在するんだな。気を失う前に聞こえたんだけど、洗浄師って何?」
「洗浄師様はこの世界に必要不可欠な存在です。儀式の間に着きましたら説明を致しましょう」
時期に着きますよ、と言った切りメイロードは薄い桜色の唇を引き結んでしまったので、これ以上の詮索は無理だと判断したハルは諦めて、視線の先に現れた光景に目を細めた。
多くの者が崇拝の眼差しで見惚れるであろう、全てが大理石で作られた威厳を放つ建造物は、まるでギリシャ神話に出てきそうな神殿そのものだった。
「ご紹介が遅れましたが私、神官長のメイロードでございます。この神殿で召喚の儀式を行い、洗浄師である美琴様をお呼びしたのは私達です」
「あぁ、あんた神官長だったのか……で?これから僕の今後について決められるんだろ?……僕は巻き込まれただけなのに」
脱力気味に呟いたハルの言葉は耳に届いているはずのメイロードだが、そのことには触れず、国王陛下には言葉遣いを正すようにと促した。
「******、******」
ハルには聞き取れず理解のできない言葉を唱えるメイロードの姿は、牢舎から神殿まで途中何度か目にして気にはなるものの、どうせ今は答えてくれないだろうと諦め大人しく彼らに従って歩いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 81