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ブルテンとリラジュース-1
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「んんんまぁ!美味い!最高ですよ団長」
サニーレタスに玉ねぎのスライスを重ね、その上にすき焼きに似た甘辛く味付けをした柔らかな赤身の肉を乗せる。それを歯ごたえのあるパンで挟み、食べやすい形に折られた紙で巻いたものを王都名物『ブルテン』という。
結局夜のご褒美とは別に、先ほど救助活動を行った広場の出店でブルテンと、それによく合う口当たりのサッパリしたリラジュースを、第七騎士団員と共に買ってもらったハルは、木陰のベンチに腰掛けてかぶりついている。
王都ヤッオーイの民は大陸でも民度が高いことで有名だ。遠くからハル達に尊敬の目は向けるものの、話しかけたり邪魔をする者はいなかった。
「僕、玉ねぎのスライスって苦手だったんですよ。でもこの味がアクセントになっていてお肉に合いますね」
「王都ではこのブルテンの出店が最も多いんだ。玉ねぎの代わりに大根の千切りを挟んだ店もあってな、色々と食べ比べをするのも楽しいぞ」
「へぇー!それは是非試してみたいです」
ハルが驚いたことに、この世界の言語は物や生物、植物とその他も広範囲で日本語とほぼ同じ表現をする。
一時は言語チートかと考えたハルだが、相手の口の動きと言葉が同じ動きである事を確信してからは、元々自分達異世界人にとって都合の良い仕様になっているのだなと感心した。
「リラジュースってなんですか?僕の国には無かったんですよね。ブルテンって名前にも馴染みはないなぁ」
「そりゃそうだろう。ブルテンもリラも発案者の名前を取って名付けられた物だからな」
「そうなんですか!じゃあ僕が作ったらハルって名前になるんですね?」
元々同世代からは比較にならないほど幼かったハルは、この世界へ来てから更に子供のようにはしゃいでいる。
脱力系女子のハルを知る者ならば、今の生き生きとした姿が信じられないはずだ。
「あぁ。洗浄師の中にも過去に『クレープ』と言うスウィーツを持ち込んだ者が居たな。だが、自分が発案したものでは無いからと、頑なに名前を付けることを拒否したそうだ」
「クレープかぁ、懐かしいな……今度、また連れてきてくださいよ」
「いいとも。今度はカフェでクレープを食べよう」
騎士の中でも特別騎士団は憧れの存在であり、団長のリバーダルスは絶大な信頼を寄せている美丈夫だ。
その団長が更に尊敬に値する異世界人のハルと仲睦まじく話す姿を見て、第七騎士団員達は眼福とばかりに、ブルテンを食しながら目に焼き付けている。
「はぁはぁ……団長、約束ですからね……はぁ」
ただ他の異世界人と違うところは、ハルがリバーダルスを見つめながら呼吸を荒くしていき、それを憧れの団長が見て頬を引き攣らせ、苦笑いをしているところであった。
「ん?んんん?ちょっと!スウィーツとかなんで詳しいんですか。過去に団長がデートした所なんて行かないですよ……うわぁ、僕初めて嫉妬してる」
「ははっ、嫉妬した自分に喜ぶのはお前くらいだな。……デートではないぞ、甘いもの好きなクリスに無理やり連れて行かれたカフェだ」
「なーんだ副団長でしたか。あの方なら歯が溶けそうなほど甘いお菓子でも、平気で食べちゃいそうですね」
ハルが勝手にチャラ男受けと決めつけている副団長・クリスは無二の甘いもの好きで、夕食後には必ず贔屓にしている店から取り寄せているクッキーやらケーキなどを頬張る姿には見慣れていた。
それとは対照的に大型ワンコ攻めのセルディは、肉さえ与えておけば機嫌が良いと言われるほどの肉好きだ。
「このブルテン……セルディにも食べさせてあげたいなぁ」
ボソリと呟いた言葉にハルの優しさを見て第七騎士団員達が感動していると、リバーダルスもそうだなと頷き、飲み終えたリラジュースの瓶を出店に返しに行きがてら、店主と何やら会話をして支払いをした後帰ってきた。
「どうしたんですか?何を話してたんです?」
「店主の手の空いた日にブルテンを大量に作ってもらい、夜食として王城の騎士団棟に届けるよう交渉してきた。あの店主は俺が王立学園に通っていた時から顔見知りで信用もある男だ。大家族と協力してくれるそうだ」
時間が経っても味が劣らず美味しくあり続けるブルテンは、大量に購入して帰るのにも適しているのだが、念の為に保存魔法が掛けられた容器に入れて貰うことも約束している。
「団長!!!!!」
ハルが肉好きのセルディに食べさせたいと可愛らしい発言をするからだ、と若干照れながらサラッと男前な行動を取るリバーダルスを潤んだ瞳で見つめながら、ハルも第七騎士団員も一生ついて行きます!と暑苦しく誓い合った。
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