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魔術師闘技大会-1
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初の魔物討伐後、ジュリアスの後任としてヘンリーに剣の稽古を付けてもらい訓練に励む一方、空いた時間で魔術師棟へ足を運び回復アイテムに魔力を注ぎ込んでいたハルは、同じことの繰り返しであっという間に二ヶ月が経っていた。
その二ヶ月間に新たに洗浄師に加わった美琴も各地を忙しく周って活躍し、『邪心』の淀みが酷かった地域は概ね洗浄されて、フジョーシ国は元の落ち着きを取り戻していった。
そして攻撃魔法の使える異世界人として注目されたハルを一目見ようと躍起になる他国の国王や魔術師たちに、当初はハルが此方へ来て生活に慣れていない事と国の再建に忙しいのを理由として断り続けていた国王・ミカエルも、いよいよ言い訳が見つからなくなった。
「何を渋っておられるのだ。女神・アリーシャ様に争いは辞めると誓った我らは、今更ハル様を取り合う気などありませんぞ」
「洗浄師としてでは無く魔法騎士として召喚された獣人でもあるハル様に、我々も会わせてもらえぬか」
各国の主要人物からさんざん強請られた結果、ハルとハルの能力のお披露目も兼ねて初の魔術師闘技大会なるものを開催し、それに出場して頂くようにと話が勝手に進んでしまった。
どこから漏れたのかフジョーシ国の国民にもその話が広まってしまい、異常な盛り上がりを見せる状況の中、ミカエルは引くに引けなくなっていった。
大陸全土に広がる魔術師協会で話し合いが行われると、満場一致で開催国はフジョーシ国と決まり、上層部も国民も浮き足立ってしまった為、ミカエルの冷静な指導の元で着々と開催準備に取り組んでいった。
*
「いよいよ明日だな。思っていたより顔色も良いようだ」
「そんなことないですよ。結構緊張して脚なんてガタガタ震えていますからね。団長は騎士闘技大会の時でも落ち着き払っていたと聞きました。流石ですね」
魔術師闘技大会の前夜、ハルを激励するために部屋を訪れたリバーダルスは、やはり緊張を隠せずにいるハルを見て、何とか和ませたいと思った。
「余裕があるように見せていただけだ。俺だって惨敗する未来を想像して眠れない日もあったんだぞ」
「えええ!本当ですか?」
「あぁ。本当だ。……騎士闘技大会よりも、団長職に着任してからは、毎日がプレッシャーの嵐だった」
二十歳で士官学校を卒業したリバーダルスは、入団と共に団長職に就いたのだが、いきなりの団長職は荷が重くて務まらないと国王に楯突いてもあっさりと却下されてしまった。
前団長は王弟陛下でリバーダルスの叔父に当たり、人柄も実力も文句のつけ所が無かった為、まだまだ現役の彼が引退したことに納得がいかなかった。
しかし叔父もまた当時第三王子という立場で入団と共に団長になり、プレッシャーと戦いながら長年務めたのだからもう自由にさせろと笑いながら、特別騎士団を去って行った。
ろくな引き継ぎも無く常に困難な選択を求められ、貴重な存在とされる多くの魔法騎士の命を預かったリバーダルスは、気を休める暇など無く緊張感を持ち続け、追い詰められた日々もあった。
「団長にもやっぱりプレッシャーは、あったんですね」
「俺だってただの人間なんだ。多少は戦闘能力に長けているってだけでな……ハル、明日はしがらみなど忘れ、思う存分に暴れて来い」
穏やかな顔でニッコリと微笑んだリバーダルスは、ハルには自分の立場や期待をされている現状など忘れて欲しいと思い、彼なりのエールを送った。
「あぁぁぁ。団長!やっぱり貴方の近くにいると『僕の暴れん棒将軍(ちんこ)』が猛りあらぶって我慢が出来ないです!明日初戦を勝ち抜いたら又ご褒美をください!」
「ははっ。そう来ると思っていたぞ。褒美は必ずやるから負けるなよ」
「はいっっっっ!!!!!」
元気よく答えたハルは早速やる気が漲って来て、鼻息荒く明日の対戦に挑むべく気合を入れ直した。
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