アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
魔術師闘技大会-2
-
大陸全土において初の魔術師闘技大会当日は、快晴に恵まれ絶好の観覧日和となり、魔術師達の雄姿を一目見ようと早朝から解放された闘技場に押し寄せた観客で、物凄い熱気に溢れている。
ローマの古代建造物・コロッセオを思わせる円形闘技場は立見席まで満席となり、今か今かと開会式を待つ者に紛れ、出場者の控え室を抜け出したハルが、救護班のテントで待機しているテッドの隣に座り、ちゃっかり自分も参加している。
ファンファーレの音が鳴り響き、フジョーシ国 国王・ミカエルを先頭に王族が現れると、場は一気に盛り上がりを見せ、彼らが如何に尊敬され国民から慕われているかを思い知らされた。
「きゃああぁぁぁ。今日も皆様お美しいですわ!ダニエル殿下もお戻りでしたのね」
「あらあちらはナルニハ王国の王太子殿下だわ。絵姿よりも素敵ですわ」
国王・ミカエルが挨拶を済ませたあと、各国から招いた主要人物達を紹介すると、それぞれのファン達が興奮気味に声援を贈り、より一層の賑わいを見せた。
国王であるミカエルは威厳に満ちた美中年で、凛とした王妃を連れて現れた後、年齢さえ分からぬほどの綺麗な側室たちも引き連れて、王族席の一角に腰を下ろした。
王位継承権を持つ者の中では、最有力候補であり、次期国王がほぼ確定になっている第一王子・エルネストも、風格のある立派な青年だ。
本日は愛する王太子妃と可愛い息子を後ろに控えさせており、二人ともハルの活躍を期待して昨夜は眠れなかったとはしゃいでいる。
フジョーシ国の王族の特徴としては、艶のある濃紺色の髪、そして薄紫色の瞳が最も有名であるが、王子達は皆それぞれどちらかを持って生まれてきているようだ。
「うわぁ。アンソニー殿下は今日もキラキラ輝いているな」
晴れて美琴と恋人になった第二王子であるアンソニーは、全身に柔らかな風を纏ったかのような爽やかな青年であり、容姿からも滲み出る誠実さと謙虚さで、国民から信頼と人気が高いというのが頷けた。
本日ハルが初めて見る、第三王子のダニエルは王族の中でも最も長身と呼ばれるだけあって、一際大きな体格に恵まれており、身体能力もかなり上であるとテッドより聞かされている。
「へー、ダニエル殿下って思っていたよりも男らしいんだな。目元は陛下にも良く似ているけどさ、なんとなく近寄りがたいようなオーラを放っているよ」
「ああ、あの切れ長の瞳はそういうイメージを持たれても仕方がないかもね。でも彼は物腰が柔らかいし、とても兄弟想いなんだよ」
第三王子であるダニエルは外交に力を入れており、年がら年中、大陸外の他国まで飛び回っていると聞いている。
ハルがなかなか王宮で見かけなかったのもそういう理由があったからだ。
ダニエルは他国で見かけた珍しい品々や、とても美しい宝石などを見付けると、必ず兄弟達にそれぞれの好みに合った土産を見繕い持って帰る話は有名で、心優しい兄弟想いの男だとフジョーシ国でも評判が良い。
他国に嫁いだ王女達は、そんな優しい兄を慕っており、この国から出たくは無いと本音を漏らしてダニエルに慰められていたという。
最後に末っ子である第五王子のアーサーは御歳十二歳で、まだまだあどけなさの残る成長盛りの美少年であった。
「ルピに続いて、なんて可愛いショタ組なんだ!まるで絵画に出てくる天使のような美しさじゃん!」
ハルの言葉にそれぞれの王子の説明をしていたテッドは呆れた目を向けて、はぁと溜め息をついた。
アーサー王子は髪の色や瞳の色こそ違うにしても第四王子であるリバーダルス団長に瓜二つで、母親が違う異母兄弟と言うのが嘘のようだと囁かれている。
既に幼気な美少年アーサー王子を通してリバーダルスへと面影を重ね、ハァハァしだしたハルを見ながらテッドが呟いた。
「そうだね。ハルの予想通り団長の幼少期にアーサー殿下はとても似ているんだ。でもここで団長の小さな頃を想像して興奮しないでよね」
リバーダルスの幼少期が恐ろしいほど美少年だったことを知ったハルは、当時のご学友達にまで嫉妬をしながらも、妄想の世界ですら遠くから怪しく眺めている危ないお兄さんになりながら、勃ち上がったイチモツを沈めるのに苦労した。
無事に開会式を終え出場者の控え室にこっそり戻って来たハルは、以前騎士の訓練場で木から落下し、治癒魔法を施した男・スコットとその友人ジミーが中で待っていたことに驚いた。
「やあ君たち。……また潜り込んだの?団長に怒られるよ?」
「あー、えっと。すぐに帰りますよ。それよりも!ハル様の初戦相手についてお話をしに来たんです」
「それって反則にはならない?」
「大丈夫ですよ!なんなら情報屋を雇って相手の得意魔法を知り尽くした上で戦う者もいるそうですから」
騎士の闘技大会でも十年に一度のお祭りとして規律はかなり緩くなっており、一応国としては非公認だが即席の賭博場があちこちに設けられて皆で賭けを楽しんでいた。
魔術師闘技大会は今回が初という事もあって、大陸全土に渡り各国の賭博場が大盛り上がりで開催日を待ち望んでいた。
「そうだ!十五歳以上なら本人も掛ける事が可能なんですよ!ハル様も本日くらいギャンブルを楽しみましょうよ。莫大なお金を掛ける者は少ないですし、本当に嗜む程度です」
うーんと唸りながらハルは先日訪れた孤児院の様子を思い返していた。
フジョーシ国が落ち着きを取り戻したとはいえ、終戦してから日が浅いことには変わりはなく、戦争や大魔物襲撃で家族を失った子供たちが多く残された悲しい現実もある。
第二王子・アンソニーの働きによってかなり孤児院は充実しているのだが、此方の世界よりは豊かな国で育ったハルの目からするとまだまだ足りないように映った。
真面目なハルからすれば稼ぎ方は良くないにしても、自分で得たお金の使い道は自由だと思い、設備の足りない孤児院への寄付へ使おうと計画を立てた。
「おっけー。僕は自分に掛けるよ!異世界人が魔法騎士をやっている事で話題性はあると思えるけどさ。きっと優勝するだなんて誰にも思われていないはずなんだ」
ハルは自分の優勝を掛けて戦うと決心し、頂点を目指すことを宣言した。
目を丸くして驚くスコット達にお金の立替えを頼むと、ジミーが魔鳩を何ヶ所かの賭博場へ飛ばしてくれて、締め切り直前に慌ただしくはなったが、全額をハル名義で本人に掛けた。
「ハル様って大胆ですね!益々憧れます!……ところで初戦相手の情報なんですけどねーー」
初戦相手は隣国サリバの筆頭魔術師で、自尊心がやたらと高く、なかなか嫌味なやつだが容姿が整っているため人気は高い。
火魔法を得意とする彼はかなり優秀な魔術師で、ねちっこい攻撃を仕掛けてくることからハルが根負けするのを待つだろうと予測された。
大陸内でもその実力は認識されているため、ハルを慕う民達は相手が悪かった、と既に諦めモードになっており、賭博場でもハルに掛ける者は異世界人様への礼儀としての好意によるものだけだった。
「いいねいいね。魔物討伐での僕の活躍は随分と控えめに伝えてもらっていたんだ。こんな時に役立つとは思わなかったよ。ふふっ、僕って知らない内に策士になっていた」
スコットとジミーが僕達もハル様を信じています!と食い気味に言って部屋を出たあと、ねちっこい相手を倒す方法を考えて、出番が来るまで集中した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 81