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呪術に犯された街-1
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「まず皆に聞きたいことがあるんだ。僕が魔術師闘技大会の決勝戦でお披露目した、スライム系の結界を張ることは出来るかな?」
「あの結界は全ての攻撃を跳ね返し、時には吸収して分解する優れものだよね。通常の結界ではこの街に意味が無かったのだとしたら、スライム結界には期待ができるよ」
ハルが質問した後にセルディが説明を足すと、魔法騎士たちは漸く意味が分かったようで、皆一斉にその場で出来るか試してみた。
結界魔法の得意なアルミンと、特別騎士団では最年長のイケジーは上手く張れたのだが、他の者達は何度やっても形にならなかった。
「なんでやねん。同じ詠唱やのに何が違うんや」
悔しがるヘンリーには黒幕たちに呪術の解除を試みているのが分からないように、街全体に掛けられた結界に重ねて魔力を加えてもらうことになった。
「あー、僕のスライム結界には団長を入れて行きますね。よろしくお願いします」
突然のハルの発言に皆が首をかしげていると、獣人の恋人を持つヘンリーには意味が伝わったようで、ニヤニヤしながら良かったやん、と祝福の言葉をくれた。
魂の番となったリバーダルスはハルと同調する為、難なく同じ結界に入ることが出来る。
本来なら同じ結界に入ることは簡単なことなのだが、スライム結界は特殊であり範囲も狭くかなり癖が強い。
アルミンが弟のテッドを入れようと試みたが同じ血を引く兄弟でも上手くはいかなかった。
「僕の計画その一はハッキリ言って無謀です。一人一人に解除魔法を仕掛けるんですが、例え上手くいっても数が多すぎますからかなり厳しいのです」
「うーん……結界魔法が得意な者は解除魔法も得意なのが基本だが、そもそも我々が呪術を解けるかどうかも分からんからな」
「イケジーさんの言う通りです。でも仲間が居ると心強いので、是非付いて来て下さいね」
要するにハルの精神安定剤的な役割だと分かったイケジーとアルミンは、苦笑しながらも快諾してくれた。
「ハルの計画その二とはどんなものだ?」
「それは街に入ってから考えます。大丈夫です!安心してください!」
すっかりハルが計画を立てて居ると思い、問いかけたリバーダルスは分かったと了承したものの、心の中では盛大にズッコケていた。
「そう言えばハル。赤子を対象に行われた実験の結果って、どうなったの?」
「あー、それが腹の立つ話でさーー」
ハルが昔聞いた話によると、スキンシップを一切せずに育った赤子はどんな子になるのだろうと疑問に思った人物が、孤児を対象に実験を行った。
オムツの取替えや授乳、沐浴はこまめに世話を焼くが、目を合わさず、声もかけず、笑顔も向けない……そんな全く触れ合いを行わない生活を続けた結果、全ての赤子は誕生日を迎える前に亡くなったという。
「なんて酷い……胸が痛くなるね」
アルミンの苦しそうな呟きを聞いて、皆一様に顔を歪め、言葉にならない感情を持て余している。
「僕の住んでいた国でも育児放棄は問題視されていたんだ。いつの時代も子供には厳しい世界だな……母親一人に育児を押し付けるのも良くないと思うんだ」
苦しげに吐き出したハルの言葉に皆が表情を引き締めて頷いている。悲しげな顔で聞いていたネオも言葉を出した。
「せっかくこの街は、誰もが育児に積極的で素敵な街だと思っていたのに……どうしてこんなことになったのでしょう……」
「……っ!だからこの街もこの国も……この世界も、僕に出来ることなら何でもして力になりたいんだ!」
此方に巻き込まれて召喚された頃のハルは、この世界には何の愛着も無いと言っていた。
それが今では誰かの役に立つならば、自分を犠牲にしてまでも授かった能力を使いたいと思っている。
ハルの有難い成長を見て、リバーダルスを始め特別騎士団の仲間たちは、彼の力強い存在に感謝し、目を細めて充実感を覚えた。
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