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スイーツモンスター
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一個くらいなら、バレないよな?
柔らかいリボンを、端からしゅるしゅると解き、上蓋をひらいた。
甘い匂いが顔の前で広がり、誰もいない家の中で、夕里はふにゃふにゃだらしない表情になる。
丸いトリュフは、拾い上げる指先の体温が伝わるだけで、少し溶け出してしまう。
自分用とお揃いのチョコレートだから、味は把握している。
期待通りの甘さがとろりと蕩けて、寂しさを埋めてくれる。キャラメルのほろ苦さが隠し味だ。
「んー……」と感嘆しながら、夕里は自分の頬に両手をやる。
そこから先はもう止められなかった。一個なら二個も三個も同じ……ついつい手を伸ばすペースも速くなって。
「……やば。全部なくなった」
汚した指を舐めながら、さも他人事のように呟いた。
茅野が来る気配はないし、今から同じものを買って来ようか。
やっぱり甘いものは目に入る場所に置いておいたらダメだな、なんて、夕里は反省のはの字も示さない。
外に出る支度をしていると、テーブルに置いたスマートフォンが震えた。
「タイミング最悪じゃん……! ねええぇ」
あともう少し待っていれば……! なんて後悔しても遅い。
味わったチョコレートは返ってこないのだから。
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