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桃の節句
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レース走ってへとへとで戻った。
さすがにそろそろ先頭奪われそうだ。
ここ三年、ねじ伏せるようにしか勝ててない。
先頭が/一番/静か/
そんなことスカシて言ってられなくなった。
こどもも大きくなってきた。
俺もロートルかあ…
家に戻るとえみりが泣いてて、真は困り顔、迅はしょげてる。
どした
もちろんえみりが泣いて訴える。
迅が!
迅がえみりのおひなさまこわしたのおー!
迅は拳を握ったが、言ったのは一言だけ。
わざとじゃない!
でも割れちゃった。
ドナちゃんもでいじーも割れちゃったもん!!
そうなのだ。
うちは三段五段にせず、ディズ△ーの陶器雛にしたんだ…
一はつないで持ってきた。
きれいに修復されてるけど、えみりは泣きやまない。
壊れたものは戻らない。
言い募ったら迅がかわいそうだろう?
父としてえみりに言うべきで、でも口が切れなくて。
そしたら一が折り紙を折り始めた。
男雛と女雛。
台紙。
金屏風。
ぼんぼりは台紙から切り起こして立ち上がらせた…
えみりがきょとんと目をみはる。
おひなさまだ!
受け取ろうとするが、一は渡さない。
迅を見なさいと目を振る。
えみりがおずおず迅を見る。
目が合った瞬間、迅はえみりに
ごめん!
と言ったけど、一瞬早く真が謝った。
ごめんえみり!
落としたの俺なんだ!
真ばか!
俺でいいのに!
よくない!
だってほんとは!!
うんぬんかんぬん。
いろいろあったのね?
わかったわかったわかったわかったわかった。
いまうちワシントンの桜の木状態なんね?
仲直りさせて、みんなで雛ケーキ食って、例年通り桃の節句が過ぎてゆく。
折り紙の男雛には、よくわからない顔が描かれていて、えみりに聞いたら俺だという。
やっぱおだいりさまはかっこよくないとねー。
すっかりおしゃまに戻ってる。
めびなはあたし。
おとおさんうれしい?
こてこてなこと言うなよォと思いつつ、真っ赤になってる俺なのだった。
夜半。
一がつぶやいた。
来年が怖い。
どうして?
お義父様が七段飾りくれそうで。
ああ!
ありうる!
どうする!!
なんか作戦考えて♪
と、いたずらな瞳で俺を見る。
それと。
優勝おめでとう。
囁くあなたの声一つで、苦しい戦いが報われる。
ありがとう。
愛してる。
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