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吸血トランス!?②
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イフの部屋も腹が立つほど広かった。そして、装飾や壁紙、カーテンに至るまで高級感が溢れている、何より清潔で綺麗だ。ドストミウルのボロ屋敷とは大違い。
俺は座り心地のいいソファーに座らされると、使用人らしき女ヴァンパイア達が綺麗に食べ物と酒を並べてくれた。
「カノル、酒は好きかね?」
「...嫌いじゃないけど、得意じゃないつか...」
俺がごねているとまあまあと肩を叩かれてグラスに高そうなワインが注がれた。
「こんな時くらい飲んでみるのもいいと思うヨ。さあさあ、素敵な夜に乾杯!」
イフに流されるままグラスを交わした。
まあいいか、今夜くらい。
「べつにさぁ、本当に嫌になった訳じゃねーんだぜ、ただどんな顔するかなーって思っただけでさぁ、つかすぐ引き止めてくれるって言う手もあったのに呆然としやがってあんにゃろう。いいさ、俺はそしたらもうヴァンパイアの使用人でも、餌にでもなってやる。たまにはあいつも悔しい思いでもした方がいいんだ。いっつもベタベタしてくるくせに自分の傲慢だけは通しやがって身勝手なんだよ!」
顔を赤くしながらふやけた口調でそう話すカノルをギャリアーノは嬉しそうににやけながら見ていた。
「そうさ!正しいのは君だ。ドストミウルも今まで弱みというものがなかったからな、君が反抗する事がいい薬になる。さあ、もっと飲みたまえ。」
ギャリアーノはカノルのグラスになみなみと何杯目かのワインを注ぎ足した。
それを一口飲むとカノルはテーブルに項垂れた。
「腹立つ...ホントに...。」
「本当に?」
「...イフ。」
「なにかね?」
「ドストミウルのやつ、俺の事心配してるかな?」
「心配していて欲しい?」
「...んなわけ!」
「きっと心配しているさ。」
ムキになって椅子から立ち上がったカノルの背中をイフは優しくさすった。
「ふらふらじゃないか...少し布団で休むかネ?私の布団でよければ使ってくれたまえ。」
カノルは静かに頷いた。
カノルは布団に腰掛けると眠気に襲われた。すぐにイフが隣に座る。
「なあ、カノル。せっかく遊びに来てくれたんだし、私からもひとつお願いがあるんだが...聞いてくれるかネ?」
「おね...がい?」
「君の血をすこーしばかり味見させて欲しいんだ。なぁに、害はない少しの間だけ意識がぼやっとするだけさ。君が吸血鬼になったり、変な病気にかかったりすることは無い。危険がないことはドストミウルとの友情に誓おう。」
「ああ...ならべつに、いいんじゃねぇかな」
シラフなら絶対に断っていたお願いだったが、酔っているのと眠気のせいかカノルはそれを易々と受け入れた。
「本当に!よかった!少しだけ痛いよ?ああ...やっぱり首筋から貰うのが一番良いかナ。」
イフはカノルの肩に手を回すと、その首筋に牙を突き立てる。
「くすぐった...いってぇ!!」
針で刺すような痛みにカノルは体を強ばらせたが、逃げることはギャリアーノの手が許さなかった。
「はいっ!終わり!ご馳走様!」
「血って、美味いの?」
「いいや、君のはそれほど。やはり純血乙女の血が一番だネ!」
「んだよ、じゃなんで吸ったんだよ。」
「味見だよ、味見。でもダメだ。君からは彼の香りが強くて楽しめるものじゃない。」
「彼...」
「ほうら、少し寝るといい。」
そう急かされるように横にされて柔らかい布団をかけられると、カノルは溶けるように深い眠りに落ちていった。
「カノル!カノル!」
聞き覚えのある声に目を開くと、カノルの眼前には見慣れた骸骨の姿があった。
「ドストミウル」
「すまない、その、色々強要した私が悪かった。今回の事はまた君の意見を尊重しつつゆっくりと話し合おうと思う。ギャリアーノを疑う訳では無いが体調は...」
カノルはゆっくりと体を起こすと、頬を赤らめ恍惚とした表情でドストミウルを見つめ、彼の肩に腕を回した。
「...よかったぁ、俺、ずっと不安で。ドストミウルに見捨てられたらと思ったら怖くてたまらなかったぁ...」
ドストミウルはひとつも動くことなく、自らにまわされた腕に強く柔らかく抱き寄せられた。
「イフは優しいけどさぁ、やっぱり俺アンタと居るのが一番安心するんだぜ...だから、こうやって来てくれるの、ずっと待ってたんだ」
ドストミウルはそんなカノルの様子を見て固まったまま、横で涼しい顔でワインをたしなむギャリアーノを見た。
「害のあることはしてないヨ!もちろんサ!ただね、ちょこーっと、血を味見させてもらっただけ。」
ギャリアーノはドストミウルにウインクして見せた。
「ギャリアーノ!それではカノルは今、混乱状態という事か!」
「そうだけど、治るでしょ明日になれば。」
ヴァンパイアの吸血は相当量でない限り死に至るほどの害はない。
ただ、ヴァンパイアの唾液には人間の意識を一時的に混乱させる作用がある。だから、ヴァンパイアに襲われた人間は吸血されてもその事を覚えていない事が多いのだ。
「ほーら、早く連れて帰りなよ。色々言ってたけどなんだかんだやっぱり君の所が一番みたいだし。」
「...勿論そうさせてもらう。」
「ゆっくり楽しい夜でも過ごすといいサ、今夜くらいの事はきっと覚えていない。」
「ギャリアーノ!」
「どうするかは君次第サ!ああ...何をしろともするなとも私は言っていない。いい夜を、我が友。」
「...ううむ、世話になったな。」
ドストミウルはカノルをマントに包むように抱くと、ギャリアーノの城を後にした。
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