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死神先生、会合に呼ばれる【3】
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クロは落ち込んだ様子のコハクを見て鼻を鳴らすと、どっかりと椅子に腰掛けた。
「あんた、名前は」
「え…」
「『コハク』ってのは、こっちでの名前だろ?本当のあんたの名前だよ」
「………」
「…やっぱ覚えてねぇか。俺もだ」
「…そうなの?」
クロは頬杖をついて目を伏せる。コハクは裏の国に来てから初めての同じ境遇の人間に会えて、内心かなり嬉しかった。
「てか、何突っ立ってんだよ。座れば?」
「え、あ、うん」
「お前さ、そんなボーッとしててよく生き残れたよな。裏オークションで売り飛ばされた達か?」
「いや、俺は先生に拾ってもらって……あ、君は…」
他人と対面して座るのはなんだか懐かしく、コハクは段々と緊張の糸が解れてくるのを感じた。
「そ、俺は裏オークションであのクソ吸血鬼に買われたんだよ。それから何度も脱出しようとしてっけど、成功した試しがねぇ」
「そ、そうなんだ」
「あんたの主人とブラッドは同僚なんだろ?てことは教師か」
コハクの脳内に、死神先生と血まみれ先生の2人が浮かぶ。2人がそれぞれ大学の授業をする姿を思い浮かべるが、その想像はなかなか形にはならなかった。
「うん。人間史っていうのを教えてるんだって。血まみれ先生は?」
「あ〜、なんか魔術とか呪いとかそんな感じだった。おかげで呪いかけられちまったし」
「呪い?」
「だから言っただろ。脱出は成功してねぇって。あれは呪いのせいだ。……ピンと来てねぇって顔だな。はぁ…こっち来い」
クロは立ち上がると、先程まで傍に座っていた窓までコハクを誘導した。そして窓を開ける。心地よい風が室内に吹き込んだ。
「見てろよ」
「…うん」
クロは深呼吸して、腕を窓の外へと伸ばした。その瞬間、窓から外に出た分の腕が炎に包まれる。
「えぇ?!だ、大丈夫?!…ご、牛頭さん!」
「あっちぃ…大丈夫だよ。一瞬だ」
その言葉の通り、引っ込めたクロの手は、何事も無かったかのように無傷だった。
「…え?何で…?」
「これがあいつが俺にかけた呪いだ。あいつの許可なく屋敷の外に出たら燃えるんだよ。まぁ、痛覚と幻覚だけで、実際は燃えてねぇんだけど」
「…そこまでされてるの」
「逆にお前は何もされてないのか?」
クロは珍しいものを見るような目でコハクを眺めた。コハクはビクリと肩を竦める。
「…何もされてないよ」
「ふーん…」
クロはその話題に興味を無くしたのか、燃えた方の手を擦りながら扉へ向かった。
コハクは慌ててその後を追う。
「どこ行くの?」
「牛頭ねぇのとこ。なんかゲームないか聞く」
「牛頭ねぇって…」
「すげぇ良いやつなんだよ。お前も話せば分かる」
着いてこいと言わんばかりにクロは廊下を歩く。コハクはその隣に並んで歩いた。頭の隅に、何故死神先生はあれほどに自分に優しいのか、改めて不思議に思った。
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