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コハク、死神先生の助けになりたい【2】
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「…それで?結局なにも聞けずに1週間かよ」
「それは……まぁ…」
テーブルに足を乗っけて呆れた顔をしたクロは、あからさまにため息をついた。
コハクは初めて血まみれ先生の家に行った時から、定期的にお邪魔するようになっていた。大抵、牛頭とクロしか屋敷に居ないためコハクは2人とかなり仲良しになっている。
「お前ほんとに俺より年上か…?ゆーしゅーふだんってやつか」
「優柔不断…だよ」
「…なんでもいいだろ。別に」
クロは苛立ちを隠せないように足をばたつかせた。確かクロが足を乗っけているテーブルの位置は、いつもは血まみれ先生が座る位置だとコハクは気がついた。
「その薬が何か知りたいし、何かの病気なら力になりたいけど遠慮して聞けない……そんなのちゃっちゃと聞けばいいじゃん」
「それが出来たら相談してないって…」
「まぁ、それもそうか」
ようやくクロは足を降ろし、頬ずえをついて唸った。そして俯いたままのコハクに顔を近づける。
「コハク」
「…何?」
「俺はな、死神先生に入れ込んでるお前が心配だ。そもそも死神先生は安心できる奴だと俺は思ってない」
死神先生の人格を疑う言葉に、コハクはハッとして言い返した。
「そんなことないよ。死神先生はすごく優しいし、今まで僕に酷いことなんか1度もしてない」
「……でも、何も教えねぇんだろ。それって隠してることがあるってことじゃねぇか」
「それは…」
確かに、死神先生は研究と称してコハクにたくさんの質問をしてくるが、自分のことは少しも話そうとしなかった。まるで触れてほしくないかのような振る舞いに、コハクは無意識に聞くことを避けていたのだ。
「死神先生も聞かれたくないことだってあるよ」
「だーかーら!お前はどうなんだよ!…知りたいんだろ。…それは自分のためにか?それとも死神先生ため?」
「…」
すぐに死神先生のためだと言えない自分に、コハクは嫌な気持ちになった。
自分のことが分からない自分に嫌気がさしたのだ。
「…悪い。記憶ねぇのに、自分のこと全部分かりゃしないよな。俺も、同じだった。ごめん」
「ううん。僕も悪いんだ。君の言う通り、優柔不断だよ」
「……」
2人は互いにどうしようもなく、ただ無言で言葉を探していた。その時、扉からノックが聞こえ、反応を返すと牛頭が入ってきた。
「失礼します。ブラッド様がお帰りになられました」
「うぇ……なんか今日早くねぇか?帰ってくんの」
「死神先生が言ってたよ。今日は午前の講義だけだって」
コハクの言葉に、クロは大きなため息をついた。
「はぁ…まぁいいや…。今日はお前と話せたし」
「…うん。僕も話せて良かったよ。ありがとう、クロ」
「…おぅ」
クロが照れ隠しに鼻の下を擦りながら、コハクに背を向けて部屋から出ていく。コハクは以前クロから、血まみれ先生が帰ってくる時は玄関でお迎えをしないとペナルティーがあると聞いていた。
長い階段を降り、広い玄関の前まで行くとちょうどいいタイミングで扉が開いた。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、ブラッド様」
「………」
牛頭が恭しく頭を下げる隣で、不機嫌そうに頭に手を回すクロを見て、血まみれ先生は眉を潜めた。しかし、コハクも居るからかすぐに笑顔に戻って鞄を牛頭に預けた。
「いらっしゃい、コハクくん。死神先生は買い出しをしてから迎えに来るそうだから、もう少しうちで待っているといい」
「ありがとうございます」
「やったな!まだ作戦立てられるぞ」
クロは部屋に戻ろうとコハクの手を引いた。
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