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「素敵な週末が過ごせましたか?」
「……ふざけんな」
月曜日。文句のひとつでも言いに光哉のクラスに行くつもりだった。
でも変にツッコまれても己の羞恥心がぶり返すので思いとどまった。
で、結果。野次馬野郎な光哉からやってきたのだ。んで結局茶々を入れられる。
「稜ちゃんと隼士が一緒に寝てたって母さんに言ったらビックリしてた」
「おまえ言い方に気をつけろ」
「だってそうじゃーん。仲良くお昼寝してただろ?」
「結菜ちゃんと一緒にな」
「結菜懐いてたね。母さんも隼士にありがとうって言ってたよ。稜ちゃんが人と戯れるの多分久々だったからさ」
「光哉が曖昧な返信しかしねぇから致し方なかったんだよ」
きっと職場でだって同じようだろう。
家族には気兼ねがいらない。だから取り繕うことない姿を見せられるんだ。
稜さん本人にも言われたけれど、実際俺と話している時は怖さなんて無かった。
結菜ちゃんがいたからってのもあるかもしれないけど、俺に見せてたのは気を張ったよそ行きの稜さんだ、きっと。
「俺、いい仕事したろ?」
「……なんとも言えない」
余計なお世話だ、と言うにはいい思いをしてしまった気がする。
でもまんまと惹かれていくのもどうかと思ってしまう。
始まるときめきを楽しめるような恋は、俺にはできない。
「ほんとに、ちゃんと協力するよ?」
「マジで今そそのかさないで」
「ちゃんと責任持ってそそのかしてるつもりだけど」
「光哉がそんな頑張ったところで向こう次第なんだから無理だよ」
高校時代の恋人と子供が出来て結婚までして。
そんな人が、万が一嫌悪はしないとしても男に鞍替えするとは到底思えない。
光哉と話してるのは、本人抜きにした勝手な話。限りなくゼロに近い可能性のために、自分自身で何ができるだろう。
光哉は真剣な顔して俺を覗き込む。
好きになって、どうする。
可能性なんて考えても分からない。
好きかも、なんてことすら流されてるだけかもしれないのに。
明らかにノンケで、大切な人を亡くしたばかりの稜さんに俺の入る隙があるというのか。
「じゃあ友達からでもいいじゃん。結菜も昨日の夜はやとくんがーって話、稜ちゃんとしてたよ。稜ちゃんがいいよって言ったら遊ぶ?」
「……光哉はなんでそんなに勧めてくんの、マジで」
「……困る?」
「困るよ。……本気に、なったらどうすんの。トラウマになるくらいの失恋したらどうすんだよ。俺そういうの大人になってからでいいって思ってたのに」
勝手に盛り上がって、実の弟がこんなに言ってくるならぶっちゃけ可能性あるんじゃね?なんて期待で心を膨らませてしまったら。
当の本人はゲイなんて大嫌いかもしれない。ずっとずっと奥さんのことを愛してるかもしれない。
俺の入る隙なんて永遠にないかもしれないのに。
「隼士が泣いたら俺が慰めてあげるよ?」
「……だから、おまえそーゆー無駄に男前になるのやめろって」
「惚れちゃう?」
「惚れない」
「じゃあ稜ちゃんには惚れちゃった?」
「……誘導尋問」
分からない。
分からないけど、貫いてみたくなった。
でも、やっぱり分からない。
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