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魔王、目覚める
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魔界にも朝というものがあって、それは悪魔にも平等に訪れるようになっている。
社会人がどれだけ拒もうとやってくるように。
平等に、残酷に訪れる。
朝は必ずやってくる、みたいな励ましと希望の言葉があるけれど、あれが実際、本当に希望かどうかは怪しい。
朝が全て、希望であるとは限らないのだから。
悪魔にとっての朝のように。
社畜にとっての朝のように。
学生にとっての朝のように。
「・・・」
そんなことを常日頃思いながら俺は目を開く。
魔城の窓から入る、禍々しい色をした朝日(らしきもの)を顔面に浴びて。
悪魔である俺に睡眠が休養としての意味で存在するのかと問われれば、答えは恐らくNOだ。
俺にとって睡眠は嗜好や余興に過ぎない。
休養しているフリで、ごっこだ。
それでも、そんなごっこ遊びに興じたくなるほど、俺は疲れていた。
「・・・」
俺のベッド、の中。
俺の隣、不自然に盛り上がった、例えるなら、そう。
人、一人分ほど、盛り上がったそこを。
じっ・・・と見つめてから。
「えい」
「グェッ!?」
思いっきり蹴っ飛ばしてやった。
<***>
まあ、思いっきりとはいえ魔力は込めていないので、ただの足蹴なのだが。
それでも果たして、その『中身』は。
ゴロゴロと転がり出てきて、俺の部屋の壁にゴツ、と鈍い音をたてて止まった。
「っ~!!痛ってえな!!?」
『中身』がそう声を荒げて立ち上がった。
「うるさい。近所迷惑だ」
「近所も何も無いだろこんな城に住んでおいて!?」
潰れた蛙みたいな声をあげていたモノとは思えない元気さだ。
これは魔力を込めて蹴っておいても良かったかもしれない。
俺が静かに反省する前で、やっと『中身』・・・つまりは、あの男が。
「・・・おはよう」
そう言ったのだ。
「・・・何爽やかさを演出しようとしてんだよ、無理あるだろ」
「いや、ごまかせるかなと思った」
「つかお前、何人の布団で寝てんだよぶちのめすぞ」
「え?そりゃだって昨日の夜・・・」
「ッ~!!いい、言わなくて良い!!」
朝から一悶着である。
「いやー、いつもあれくらい素直だと良いんだけどねえー。あんなに可愛らしけりゃそりゃー、人間界も譲ってあげようって気にもなるよ、うん」
「黙れ・・・お前は人間界の何なんだよ・・・」
俺も、こいつも。
一応形式としては男だ。
悪魔の俺に性別の概念がしっかりあるかは正直微妙なところだが。
見た目は人間の男を模しているので、まあ男と言っていいだろう。
女だと思ったことはない。
ただ、種族は全然違う。
俺は悪魔で、こいつは人間。
そして俺は魔王で、こいつは勇者なのだ。
相容れないはずの二人だ。
文字通り住む世界が違う。
のに、何でそんな奴と同衾(どうきん)しているのかといえば。
・・・まあ、そういうことだ。
色々あって、俺を脅して襲ってきたゲスな勇者と魔界を背負った魔王が結局のところこんな風に同じ朝を迎えているのだから、この世は分からない。
この世?あの世・・・?
まあどちらでもいいか。
『部下の命が惜しければ、俺に抱かれろ』みたいな感じだったと思う。
・・・今思うと本当にエグいなコイツ。
勇者どころか人間として終わっている。
魔王である俺が人道について説くことになるとは・・・この世は(以下省略)
「・・・つーか、服を着ろよお前・・・」
さっきから俺を煽るような事ばかりしているが、その姿は全裸である。
なぜ全裸なのか?
・・・それ説明しないとダメか?
さっきから言ってるしな・・・。
いや、だからといってずっと全裸なのはおかしいだろ。
悪魔の俺でもおかしいと思うわ。
「なんで?興奮するから?」
「そりゃお前だけだろド変態」
「そのド変態に散々啼かされてたアンタは何なんだよ」
「黙れマジで」
俺は黙らせる為にも目の前に闇を作り出し、そこから服を取り出した。
魔力によるタネなしマジックだ。
「へー、便利なもんだな・・・それで今度コスプレプレイとか」
「歯ァ食いしばれ」
「冗談冗談冗談冗談」
プレイを何回言うんだコイツ。
つか必死だな。
その割にはさっき目がマジだったぞ。
いらないものを見せてしまったかもしれない。
・・・まあそれでも全裸の人間と一緒にいる状況よりはマシだろ。
多分。
「・・・大体、コトが終わったら人間界に戻れって言ってるだろ」
「えー、じゃあ後始末できないよ?」
「それはして帰れよ」
「一人じゃできないもんね?後ろから掻き出すの」
今度は俺は言葉を聞くよりも先に実力行使に出た。
壁ドンの要領で壁にヒビを入れた俺にはさすがにビビったらしく、男はやっと口を閉じた。
ここに至るまでがなげーよ。
いくらもう文字数制限ないからって話しすぎだろ。
「・・・魔界はそもそも魔力が充満しているから人間には毒だって言ってやっただろ、前に」
そう。
魔界はその存在だけで人間には害悪なのだ。
だから人間であるコイツにはまあまあ効くはずなんだけれど。
そんな素振りはあんまりないんだよな・・・。
人間だよな?マジで。
「そんなに俺の事心配?」
「いや、そうじゃなくて。お前が何回死のうと俺にはあんまり関係ねえけど、お前が死んだら部下が浄化されるだろ」
この男の中には聖なる力が宿っていて、それが、男の死の際に体内から溢れ出て、俺の部下たちを浄化、消滅させてしまう。
それが、男から聞いた話だし、俺が脅された内容だった。
「俺の心配は?!」
「とりあえず今日だけでも三回は死ねばいいと思う」
「ヒドイ!」
そんなことを言いつつ。
このやり取りももう何度目かになる。
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