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魔王、受ける
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魔王というものは。
前述した通り、現魔王に勝負を挑み勝ったものが次の魔王になる実力主義の賜物である。
だから現魔王である俺に勝負を挑んでくるものがいても、何ら不思議はない。
むしろ心中穏やかである。
魔王って結構すること多いんだよな。
「で、では魔王様、このまま座してお待ちになるおつもりで・・・?」
シュルガットの動揺。
まあまあ落ち着け。
そうはいっても、だ。
「魔王には魔王の責任がある。魔王が実力主義なのは、力が魔物にとって全てだからだ。だからこそ、ここで俺が何も勝負せず奴を受け入れたら、アイツは他の誰にも認められないだろう」
俺が認められたのは、前魔王に勝ったからだ。
それだけで他の魔物は認めざるを得ない。
最後の障害になってやろうではないか。
「魔王は魔王として、挑戦者を持ち得る全ての力を持って受けなければならない。それが責務だろう?」
そしてもちろん、俺の力の中には。
「シュルガット、お前だって俺の力だ」
「それはもちろんそうですが・・・ハッ!!?まさか・・・」
ふむ。
さすがシュルガット。
真意に気が付く速さは魔界一だな。
嫌悪感むき出しの顔でなければ100点だ。
その時。
ガシャン!!!と。
凄まじい音と共に部屋の窓が割れた。
この部屋の耐久性、かなり高いはずなんだけどなぁ・・・。
轟音と笑い声が響く。
お越しなさったらしい。
「ギャギャギャ!!!死ね!!!!」
窓の外から特徴的な奇声(笑い声か?)と、緑色に光った弓矢が飛んでくる。
部屋に伝令に来た悪魔に吸い込まれるように弓矢が射貫くその瞬間。
「ガアプ!!!」
俺の呼び声一つで。
伝令悪魔のいたところにはやたらとエゲツない極彩色の赤色に変化した弓がブッ刺さっていて。
そして俺の真横に、伝令悪魔の腕を引っ掴んでニコニコと笑みを浮かべる。
タレ目のイケメン悪魔が立っていた。
<***>
前述した通り。
俺には個人的に契約を交わしている悪魔が存在している。
シュルガットもそのうちの一人だ。
そして、目の前のこのタレ目イケメンも。
「やぁっと呼んでくれた。折角契約したのに全然呼んでくれないんですもん」
柔らかい声色で、俺を見て嬉しそうに笑う男。
その手に掴んでいた伝令悪魔を手荒く投げ捨てる。
ありがとう伝令悪魔。そしてすまない。
「久しいな、ガアプ」
ガアプ。
俺と個人的に契約を交わしている悪魔の一人。
意識や知識を与奪し、愛憎を掻き立てる力を持っている悪魔だ。
そしてなによりガアプの本領は、この瞬間移動能力にある。
自分だけでなく、相手をも移動させることができる、俺の知る中で最速の悪魔だ。
「うーん、見たところ攻撃されてるぽいですね?ちょっと、そこの側近何してたの?」
挑発するように笑みを浮かべるガアプとソレを睨みつけて歯軋りするシュルガット。
「ま。ここじゃなんだから一度移動しましょうか?」
そう言うやいなや、ガアプは俺を抱きかかえる。
お姫様抱っこの要領で。
「なっ!!?貴様・・・」
シュルガットの怒号を最後まで聞くことなく。
俺はガアプに抱えられたまま、一瞬で魔城の外の別邸へ移動していたのであった。
<***>
「すまないな、面倒をかけて」
「いいですよ別に。そのために俺がいるんだし」
すぐその後、シュルガットが部屋へ凸してきた。
顔w
折角の美形が台無しの般若の顔してるw
「アナタねえ・・・」
「さっき貴様とか言ってたくせに、魔王様の前だからってカッコつけちゃって~」
瞬間移動でシュルガットの前に行き、何気なく扉を閉めるガアプ。
防犯のためなんだろうな。
防犯て。
悪魔が防犯って。
あと俺を抱えたまま行くな。
「っていうかいい加減魔王様から離れてください!!!」
そこでやっと俺をおろすガアプ。
地味に俺をおろす瞬間首筋に鼻を埋めて(うずめて)いたけど。
キィイイイイ!!!!とまた阿修羅みたいな顔をしているシュルガット。
ちょっと気の毒かもしれない。
っていうかずっと抱えてたの重くなかったのか。
まあいわゆる細マッチョタイプだからなあ。
あと本当にイケメン。顔がいい。
後ろでちょっとだけ括ってある髪の毛と頭から生えている、黒くて長細い角。
そして黒い袖のない服から見える右肩に浮き上がっている紋章。
「ガアプ」
俺はガアプを手招きする。
瞬間移動で俺の前にくるガアプ。
俺が指輪を着けたまま、自分の右手をそっとかざすと、指輪の下の紋章がぽうっと光り始めた。
シュルガットが一瞬たじろいだが、すぐにその光が青っぽい色をしているのに気が付いてホッと吐息を漏らす。
よほどトラウマらしい。
その動作に、ガアプは何も言わず俺の前に跪いた。
俺はその青く光った手でガアプの紋章に触れる。
その途端、ガアプの紋章が同じ色に光った。
「ああ・・・魔王様の御力を感じます・・・」
うっとりとした表情を浮かべてから立ち上がるガアプ。
これでガアプの魔力が補給されたはずだ。
これも契約の一つ。
契約した悪魔が、俺にこうして忠節を誓うことで俺から魔力を供給される。
魔王たる俺からのダイレクトな供給だ。
それは極上のご馳走になる。
とはいえ、俺に心からの忠節を誓う必要があるので、俺に対する偽りの心があれば発動しないのだが。
「ガアプ、魔城にはまだ沢山の悪魔がいる。攻撃された魔城を立て直す時間が欲しい」
「んー、ってことは俺は魔城の魔物たちを一度避難させればいいんですね?」
「話が早いな」
一度魔城を空にしてから、魔城ごと文字通り『建て』直す。
「頼めるか?」
「・・・もちろん」
ブワッとガアプの紋章が光ったその刹那。
ガアプはもういなかった。
「これで移動はできるな」
「・・・魔王様」
複雑そうな顔を浮かべるシュルガット。
存外独占欲が強いから、俺に直接従う悪魔が他にいることが不満なんだろうか。
まあとはいえ、まだ他にも俺の精鋭の悪魔が沢山いるんだが。
「全力を尽くすからな。さて次は・・・」
「うぅ・・・」
「アスモデ!!!」
「よりによって・・・」
俺の呼び声と共に、俺の首元に腕が回される。
「会いたかったよぉ、魔王サマ♡」
甘い声と甘い香り。
俺の次なる契約相手だ。
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