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僕はてっきり、絵を描いたりする為に呼ばれたと思っていたのだが……先輩はそういうつもりじゃなかったらしい。
(何でベッド?)
僕は訳が分からず、先輩を見上げた。
その視線で僕が困惑していると察してくれたのか、先輩が驚きの言葉を口にする。
「お前がするのは、デッサンモデルだ」
「……デッサン、モデル?」
つまり、えっと……僕は絵を描くとかベタを塗る? とか、そういう事をするんじゃなくて、先輩が描く絵のモデルをする……という事だろうか?
それで、ベッドを指さしているとしたら……何でベッド? ヤッパリ分からない。
動こうとしない僕を見て痺れを切らしたのか、先輩が僕に近付く。
そして、無理矢理僕の腕を引っ張った。
「え、まっ、先輩?」
「横になれ」
「何――うわっ!」
ベッドの近くまで僕を引っ張ると、先輩が僕の背中を押す。
バランスを崩して、僕は思わずベッドに倒れ込んだ。
「ポーズ指定するから、言う通りにしろ」
「な、何でベッドに……?」
先輩は作業机の上からスマホを取り、僕に向ける。
『カシャッ』
「え……い、今……撮りました?」
もう何が何だか分からない。
いきなり好きな人に写真を撮られて、しかも特に表情を作っていたわけでもなかったから、きっと間抜けな顔だった筈。そう思うと、恥ずかしくなってくる。
先輩は相変わらず不機嫌そうな表情で、僕を見下ろした。
「次の漫画、男同士の恋愛ものなんだよ。そんなジャンル描いた事ねぇから、資料が欲しい」
男同士の恋愛と言われて、僕の気持ちを言い当てられたわけじゃないのにドキッとしてしまう。
「自分の体なら見飽きてるが、資料は多くても困らないからな」
そう言って先輩は、ベッドの上に膝をついた。
そして、僕に近寄る。
「せ、先輩……っ」
「仰向け」
急に距離を詰めてきた事に緊張しているのは僕だけで、先輩は短く指示を出す。
「両手首、頭の上」
それだけ言うと、先輩は僕の両手をひとまとめに掴み、僕の頭上に持っていく。
先輩の長い指が、大きな手のひらが……僕に触れる。先輩からしたら僕はただのデッサン人形のようなものかもしれないけど、僕はそうとは受け取れない。
(先輩の手、大きい……っ)
変な意味なんて無いのに、触れられた箇所が過敏に反応してしまう。
「先輩……そのっ、えっと」
「紐が必要か」
僕の戸惑いはお構いなしに、先輩は先輩の頭の中にある構図をどんどん僕に当てはめていく。
「ま、待ってください!あの、僕――」
「シャツでいいか」
「話を聞い――ちょっ、先輩っ!」
先輩が僕の腕を掴んだまま覆いかぶさっていて、ただでさえ胸が苦しいくらいドキドキしているのに、先輩は突然僕の腕から手を離して服を脱ぎだした。
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