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Mの恋 バレンタインSS
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バレンタイン…人が好きな人にチョコを送る日。つまり、恋人達にとっては、互いの思いが炸裂するような、熱で浮かされる一日になるに決まっている…はずだ。
それが、何故にどうして…。
俺は、目の前で腕組みして壁に頭を預けている我妻さんに体を二つ折りにして謝罪していた。場所は玄関。俺の背後で玄関扉は重く閉ざされていた。
「家にチョコ忘れてきましたぁぁぁッ‼」
「…体育会系の謝罪だな。」
我妻さんはそう呟いて、ふっと口元を緩める。…我妻さんは怒ってない。否、普段から取引先や上司以外には愛想が息してないからわかりにくいが、この人はこう見えて、けっこう優しい人なのだ。
「すいません、今から取りに…。」
「帰らなくていい…。」
皆まで言う暇もなく、遮られた。…どういう心境かわからず、俺は情けないほどオロオロしてしまう。
「でっ、でも、せっかく俺が我妻さんにって買ったチョコなのに…。」
「全部言わせる気かよ。ったく。鈍ィな…。」
我妻さんは俺の胸倉を掴み上げ、至近距離でそっと囁く。
「…久しぶりに会えたのに、帰んなよ。」
蚊が鳴くような、細い声音だった。
予期せぬ不意打ちに、俺の鼓動がどくんっと弾む。
「口に入れたら溶けてなくなるチョコなんかいらねぇよ。幾らあっても満たせやしねぇんだ。…俺が欲しいのは、飢えてんのは…。」
わかれバカ、と掠れ気味の声で呟いて、我妻さんが俺との距離をずいっと詰める。
一瞬の出来事だった。
俺の片頬に手が添えられたかと思うと、唇によく知っている温もりが馴染む。…触れ合うだけのキスに、全身の血が逆流しそうなほど煮え滾るのは、この人だけだと俺はわかっている。
するりと相手の背に両腕を回す。片腕でそっと腰元掴んで固定し、逃げ場をなくしてから、強引に唇を舌で引き裂いて…ゆっくり、じっくりと押し入っていく。口腔の酸素を奪い、舌先で刺激し、舌全体で圧迫し、絡めた唾液で汚染する。腕の中で、我妻さんは幾度か丘にあげられ酸素を欲する魚みたいに、びくびくっと大きく痙攣してそこから逃れようとはしたけれど、俺が許さない。試みは失敗に終わった。頬に添えられていた片腕は今や力をなくし、だらりと我妻さんの太腿の横辺りに垂れていた。
「っは…。おち、あい…。」
桜色の染まった頬に、じんわりと赤く発色しつつある耳朶。悪戯に人差し指で引っ掻いたら、予想以上に過敏になっていたらしく、『ぁんっ』と愛らしい反応が返ってきた。
「我妻さん…。あんまりその気にさせないで下さいよ。まだ…ここ、玄関なんだからね??」
革靴の先で玄関のタイルを二度三度と蹴りつけるように叩く。…恋人のいじらしい姿に、それ相応に肉体へと火照りが現れ始めていた。
年上の恋人は、淫靡な表情でほっそい腕を俺の首に絡めあげて、ぐいっと顔を潤んだ双眸ごと近寄せてくる。
「…だから、言ったろ??チョコなんかいらないって…。」
「…ッ」
こちらに反論させる隙すら与えず、我妻さんに唇を奪われる。俺はやれやれと瞳を眇めてから、そろり、と瞼を閉じた。
チョコよりもっと濃厚で、甘く蕩けていくキスをしよう。
やがて二人は溶け合わさり、一つになっていくのだから…。
Mの恋SS Vの不在
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